ほのぼのした気分になれるコージーミステリ10選

bbq

今回は手軽に読めて明るい気分になれるミステリを紹介したいと思います
トリックの凄さよりも、ほのぼの感を重視して選びました。なので日常の謎が多めですね。殺人事件を扱ったものでも、基本的には明るいテイストで陰鬱さはないのでご安心を。
グロいのが苦手の方や、重いのばかり読んで食傷気味な時なんかにおすすめです。

探偵映画の撮影中に監督が謎の失踪をとげる。撮影は大方済んでいるものの、肝心の結末部分がわからない。犯人と結末は監督しか知らないのだ。残された出演者・スタッフ一同は、撮影済みのシーンから映画の犯人役を推理する。
明るく楽しいユーモアミステリ。本当の殺人事件の場合、自分が犯人と疑われないようにするものだけど、本作の場合はその逆。犯人役がおいしいため、役者たちは皆こぞって自分が犯人だと主張します。その理屈、議論が本当に面白い。
主人公は見習い助監督の青年。ヒロイン役も出てきます。ドタバタやコメディ好きな人は読んで損ないです。
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『過ぎ行く風はみどりいろ』 倉知淳

猫丸先輩シリーズと呼ばれる中の一冊。ほのぼの感では他のシリーズ作の方がふさわしいですが、ミステリとしては本作が断然面白い。
密室殺人、降霊術での殺人など、本格好きには堪らない不可能犯罪が出てきます。そして最後に待ち受けるどんでん返し。本格ミステリとしてのクオリティが高いです。こういう本格作品は暗くなりがちだけど、猫丸先輩のキャラによって不思議と暗さを感じさせません。
そして秀逸なのが読後感の良さ。まさに緑色の風といった感じで、素晴らしいタイトル。爽やかさが群を抜いています。殺人事件を扱った本格では、読後感が一番良いかもしれません。余談ですが装丁は旧版の方が良いと思う。

『星読島に星は流れた』 久住四季

孤島での殺人事件を描いたクローズドサークルもの。この作品はまず設定が魅力的。舞台の島は海外にある何度も隕石が落ちる島。不思議さとロマンに満ちています。殺人事件は起きるけれど、魅力的なキャラたちのおかげで、基本的には明るい雰囲気。
隕石についての蘊蓄が豊富だし、ちょっとした恋愛要素もあったりして、ミステリ好き以外の人も、読み物として普通に楽しめると思う。
謎については比較的分かり易いですかね。読後感がいいし、読みやすいため、クローズドサークル入門にもおすすめ。本格ミステリで孤島と言ったら、だいだい猟奇的なのが多いですからね(笑)。

『我らが隣人の犯罪』 宮部みゆき

五編が収められた短編集で、日常に寄り添った話が多いです。特に表題作の『我らが隣人の犯罪』がまさにそんな感じ。
隣人の犬の鳴き声に悩んでいる家族が、それを何とかしようと一計を案じます。決行するのは中学生の息子。犯罪を扱っていながら嫌な感じはありません。
特におすすめなのは『サボテンの花』。小学生たちが卒業研究にサボテンを選んだのは何故か、という話。これは絶対読んだ方がいいですね。とても暖かい気持ちになります。

『上石神井さよならレボリューション』 長沢樹

高校生たちが繰り広げる日常の謎がテーマの学園ミステリ。ミステリとしては弱いんですが、キャラが個性的で読んでいて楽しいです。ドタバタ劇が面白く、青春らしさを感じられる作品。特に際立って凄い部分はなくても、気軽に楽しめる良作。
なのでシリーズを重ねてこそ、良さが発揮されそうなのに、これ一冊しか出てないんですよね。このキャラたちをこれで終わりにするのは、もったいない気がします。エロネタとかで好き嫌いは分かれそうだけど、もう一冊くらい読んでみたかった。
表題作の『上石神井さよならレボリューション』に関してはミステリとしても楽しめます。もともとこの作者は本格ミステリを得意としていて、この短編では本格らしさが発揮されています。

『風が吹いたら桶屋がもうかる』 井上夢人

キャラたちの掛け合いが楽しい連作短編集。仲良し三人組の元へ悩みを持った美女が訪れ、その謎を解決するというもの。
各話の展開は決まっていて、まずミステリマニアが推理を披露し、それが外れた後に真相が判明するという流れ。型が決まっているため、水戸黄門のような安心感があります。そのお約束の展開と、コメディチックなやり取りを楽しむ小説ですね。
ミステリマニアが推理を外すと言う意味では、アンチミステリの遊び心があります。全編通して明るい雰囲気だし、筋立てが分かり易いため、誰にでもおすすめします。それこそ子供でも楽しめると思いますよ。

『蒼林堂古書店へようこそ』乾くるみ

ミステリの書評がついた連作短編集。物語の舞台はミステリ専門の古書店。そこに常連客が集まり、ミステリや日常の謎について議論します。日常の謎と言っても本当に些細な謎で、解決もあっさりしているため、カタルシスを得られるタイプではないです。
そこに重点が置かれてないのは明らかで、共通の趣味を持つ仲間と語り合う心地よさ、その雰囲気を楽しむための小説。古今東西のミステリ小説について語り合うので、コアなミステリファンも楽しめるし、ミステリ初心者の人は読書案内として活用できます。
嫌な人は誰も出てこず、ほのぼのした優しい小説。こんな古書店があれば僕も毎週通いたい。

『恋と禁忌の述語論理』 井上真偽

物語の形式は連作短編。大学生の主人公が天才数理学者の叔母に、自分が体験した事件を話します。彼女の意見によって、予想外の真実が見えてくる。
この作品が他と一線を画すのは、それぞれの事件がすでに解決している点。推理するのではなく、その解決が正しかったのかを、数理論理学を用いて検証するという形。一種の多重解決ものとも言えて新鮮でした。
各話で取り扱う事件には殺人事件もあります。でもそれはすでに終わった事件。本筋である大学生と叔母のやり取りには、ゆるい空気が流れています。各話の事件部分もしっかり作り込んであるし、検証というやり方も興味深い。それを行う二人のキャラも立っています。
ただ論理式とかも出てくるので、手軽に読むタイプとは違いますね。

『富豪刑事』 筒井康隆

刑事ものの常識を無視したコメディたっちの連作短編集。刑事が主役のミステリと言ったら、綿密な捜査の末に真相に辿り着くのが常道です。しかし本作は金の力ですべて解決してしまいます。筒井康隆らしい良い意味でふざけたミステリ。
そのやり方が面白いのはもちろん、ふざけたキャラクターたちに笑ってしまいます。大富豪の爺さんや署長など、個性豊かなキャラが揃っており、ハチャメチャで読むと元気になれます。
ただ、昔の書き方というか、改行があまりなく文章の塊が続いたりするため、読みづらく感じる部分があるかもしません。
ちなみに、僕はドラマ版とアニメ版は見てないので、それらとの違いはわからない。いろんな媒体に波及してることからも、作品自体に魅力があるのは確かですね。

『わくらば日記』 朱川湊人

昭和30年代が舞台の話。実際の昭和の出来事にも触れており、ノスタルジーを感じさせます。不思議な能力を持つ少女と、その妹が主人公の連作短編で、人の繋がりを描いたやさしい物語の数々。仲睦まじい二人のやり取りが微笑ましく、読んでいて暖かい気持ちになります。
各話の基本的な流れは、何らかの謎があってそれを透視能力を使って解決という形。謎解きに重点を置いたミステリではなく、謎を通して人々の心の機微を描いています。必ずしもほのぼの一辺倒ではなく、悲しみを感じる部分もあります。
昭和が舞台のノスタルジックな話を読みたい時に最適。読み終わった後に、良い本を読んだな、という気分に浸れます。

あとがき

ミステリというジャンルでは、やはりあっと驚くようなトリックが使われたものが目立ちます。でも、ここで紹介したような、肩肘張らずに読めるミステリも大好きですね。
どなたかの読書選びの参考になれば幸いです。

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