小説版『リング』鈴木光司 映画と原作の違い ネタバレあり

 

感想 ★★★★★

『リング』といえば日本を代表するホラー映画で世界的にも有名。どんな内容かわざわざ説明する必要がないほどで、間違いなくホラー映画の傑作ですね。

でも原作まで読んだ人は意外と少ないのではないでしょうか。小説版『リング』も面白いです。映画と小説どちらも星五つです。

ただ映画と原作では結構違うので、その当たりを中心に書いていきたいと思います。僕は映画を先に見て、それからだいぶ経ってから小説を読んだため、驚いたことがたくさんありました。

思いっきりネタバレしていますので、これから小説版を読むつもりの方は注意して下さい。

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あらすじ

雑誌記者の浅川は、若者たちの突然死の謎を追っていた。若者たちは皆、同日同時刻に苦悶の表情を浮かべ死んでいた。

この不可解な事件を追う内、彼らがとあるペンションに泊まり、1本のビデオテープを見ていたことが判明する。

見たら死ぬビデオ……。まさかそんな物あるはずないと高をくくり、浅川は見てしまう。だが、その判断を激しく後悔する。これは間違いなく本物だ。

どうすれば助かるのか、浅川はオカルトに詳しい友人・高山に相談する。それから2人は協力してこのビデオの謎に挑むのだった。

 

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感想

映画と小説では意図していることが違います。映画の場合は恐怖を第一にしていて、ホラー映画として楽しめるような作りになっています。

やはり映像なので、視覚的に怖くないとガッカリしてしまいますもんね。その点とても上手く演出していました。

小説の方は特別怖いと感じるシーンって実はないんですよね。ホラーというよりもミステリー要素が強く、面白さのタイプが異なります。

映画は呪いのビデオの存在が噂で広まっている状態からスタートします。対して原作の方は同時刻に死ぬ原因がわからない。

ビデオが原因と突き止めるのにも時間を要します。そしてビデオ映像の謎解き過程も違う。

ホラー的な演出よりも謎を追う過程、そして最後に明らかになる真相に面白さの主眼があって、とても
ミステリー的。なのでホラーが苦手な方でも全然読めます。

そういうタイプゆえ、よくあれだけ映像として怖い作品に仕上げたなあと、小説を読んだ後で驚かされました。

貞子はもちろんのこと、あの特徴的な死に顔とか、写真を撮ると顔が歪むとか、画的に怖い表現が多々ありますもんね。

それでは具体的に違うところを挙げていこうと思います。細かい部分の違いはいっぱいあって、そこはは他に譲るとして、ここでは貞子と主人公コンビに焦点を絞って書きたいと思います。

 

貞子の違い

貞子が登場して以来、長い髪に白い服はお化けの象徴になりました。これは原作にはなくて、原作では人間時の描写しかありません。

超能力を使える不気味な女、しかし恐ろしく美しい女と表現されています。

あのビジュアルは映画のオリジナル。そしてテレビから貞子が出てくるあのシーンも、映画オリジナです。

このシーンがなければここまで有名にならなかったでしょう。考えついた人は天才ですね。

そして僕が原作を読んで一番驚いたのは、貞子の病気について。

睾丸性女性化症候群という特殊な病気で、心も体も女なのに染色体は男。子供を生むこともできません。

そして天然痘の最後の罹患者でもあった。

こんな設定があったと知らなかったもんだから、めちゃくちゃビックリしました。

映画では恐怖に特化させるため省くしかなかったんでしょうが、謎解きという意味ではこれはとても重要な設定です。

 

助かる手段がダビングだった理由

原作で明かされる貞子の設定を加味すれば納得できます。

貞子の狙いは大衆への復讐。その強い怨念と、根絶へ追い込まれた天然痘の怨念が結びついて、増殖という方法が取られた。

ダイビングを繰り返し人から人へ感染する様は、まさにウイルスのそれで、無尽蔵に増えていくでしょう。

それでダイビングという手法だったのです。

また、子供を産めない貞子にとって、自分を増やすことには別な意味があったかもしれません。

映画を観た当時、僕は何も考えてなくて、恐怖の手紙のアレンジ程度にしか思っていなかった。

こんな風にちゃんと考えられていたことに、驚くとともに感嘆しました。よく作り込まれています。

主人公の違い

映画では浅川を松嶋菜々子、髙山を真田広之が演じており、男女のコンビになっていました。

しかし原作では浅川は男で、髙山とは古くからの親友という関係。

2人とも見た目と性格が全然違います。この違いで作品の印象もずいぶん変わってきます。読み味はまったく別物。

原作の方は2人で謎を追いかけるバディものの面白さがあり、そういう作品特有の友情も感じられます。

原作の高山は映画とは大違いなので、最初は面食らいました。かなり癖の強い人物で嫌悪感を覚えるほどなのですが、最後にはその印象も変わり、この点でも意外性をもたらしています。

映画版の配役、キャラ設定はあれで正解だと思いますが、原作の方が読み応えがありますね。

それぞれの媒体で最適なキャラ設定になっていると思います。

 

あとがき

映像化作品の場合、原作の方が好き、あるいは映像の方が好きと、意見が分かれるのをよく見かけます。

ここまで演出が違えば『リング』もそうなりそうなものだけど、両方とも成功しています。

それぞれが狙いにあった見事な演出をしていて、本当に凄い。

同じ『リング』という作品でもそれぞれに違った良さがある。そんな風に思える希有な作品。

映画を観て疑問に思った点があったら、原作を読めば解決します。映画と小説、共におすすめです。

 

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