小学生が主人公のミステリ小説『僕の神さま』芦沢尚

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感想 ★★★★☆
登場人物が小学生の連作短編ミステリ。
主人公の周りで起きる様々な謎を、皆から神さまと呼ばれている頭脳明晰なクラスメイト・水谷くんに相談します。謎に遭遇するのは学校内がほとんどで、二人で謎の解決に乗り出す。
小学生の探偵ものというと、ほのぼのした話をイメージすると思いますが、本作の内容は重いです。ミステリとしては小粒ながら、小説としては良かったです。
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あらすじ

第一話 春の作り方

亡くなった祖母お手製の桜茶の元を、うっかり床に落として駄目にした主人公。このままでは祖父が悲しんでしまう。困り果てた主人公は水谷くんに相談し、対応作を練ってもらう。

第二話 夏の「自由」研究

同じクラスの川上さんは、父親のパチンコ通いに頭を悩ませていた。そのことを知った主人公と水谷くんは、彼女を助けるために一計を案じる。だが、それによって思わぬ事態へと発展する。

第三話 作戦会議は秋の秘密

運動会の騎馬戦の一幕を描いた話。主人公のクラスはこの騎馬戦に絶対勝たなきゃならなかった。クラスの中に消極的な児童がいて、険悪な雰囲気になる中、水谷くんが騎馬戦における必勝法を伝授する。

第四話 冬に真実は伝えない

冬になってある噂が囁かれるようになった。図書室に呪いの本があるというのだ。この本を読むと三日後に死ぬ。回避するためには他の誰かに読ませるしかない。

よくある怪談と決めつけ、度胸試しでその本を読んだクラスメイトに、不思議な現象が起きる。たまたま手に取った本に、死を暗示する文章が書かれているのだ。

他の本を手に取るとまたもや不吉な言葉が。気になった児童は水谷くんに相談するのだが――

エピローグ 春休みの答え合わせ

春休みに水谷くんと校庭で遊んでいると、二人の元へ女子児童が駆け寄ってくる。ひどく焦った様子で、話を聞いてみると弟が迷子になったとのこと。
事情を聞いた水谷くんは、弟の行方を推理する。
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感想

読んでいてまず思い浮かんだのは、麻耶雄嵩の『神さまゲーム』。『神さまゲーム』のキャラを現実的にして、日常の謎系ミステリにした感じ。
麻耶雄嵩の方は本物の神さまが登場し、ガチガチの本格ミステリという、かなり尖った内容。そして独特のふざけた感じがあります(褒め言葉)。
対して本作は現実に即したストーリーで、児童虐待の問題を扱う真面目な内容。一件似ているようで、意図しているところは対極ですね。
本格ミステリが好きで、驚きを求める人には『神さまゲーム』をおすすめします。

さて、本作『僕の神さま』は小学校が舞台の連作短編集です。第一話はほのぼのテイストで、第二話から一気に雰囲気が変わります。
第二話で児童虐待の問題を扱っており、これがメインの話ですね。この話が第三話、第四話にも影響を及ぼします。そして探偵とは何なのかみたいな話になってきます。
ミステリとして小粒と言っても、それぞれの謎は当事者の小学生にとっては大問題で、話としては楽しめました。

あとがき

子供が主人公でリアリティのある話、重めの話を探している人におすすめです。後味も悪くない。ただ、ページ数も少な目でサクッと読めちゃうので、物足りなさはありますね。

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