『蒼林堂古書店へようこそ』乾くるみ ミステリ案内としても読める短編集

本

感想 ★★★★☆

古書店を舞台にした連作短編ミステリ。常連たちがミステリ談義をしていると、誰かがちょっとした謎を持ち寄り、みんなであーだこーだ言いながらその謎に挑みます。

でもミステリ要素はおまけみたいなもんです。ページ数は少ないし、本当に呆気なく解決され、謎解きを楽しむような作りになっていません。

本書の主眼は、緩い雰囲気で語られるミステリ談義と読書案内。各話の巻末にテーマに沿った本が紹介されていて、参考になります。

ミステリ好きのための小説と言えます。肩肘張らずに読める良作。各話だいたい20ページくらいなので、ちょっと時間が空いた時などに最適ですね。

スポンサーリンク

あらすじ

商店街の一角にある蒼林堂古書店は、ミステリ専門の古書店。店主の林雅賀は書評家も務めるほどのミステリ通。品揃えは豊富で、店の奥には喫茶スペースまである個性豊かな店。そこへ常連客が集まり憩いの場となる。

アラフォーバツイチの大村龍雄は店主と同級生で、毎週日曜に通うのが日課となっている。ミステリ好きの高校生・柴田五葉と、小学校教師の茅原しのぶも加わり、ミステリ談義に花を咲かせるのだった。

スポンサーリンク

感想

ミステリが好きな人はきっと楽しめると思います。特にこういう緩い感じのミステリ談義が好きな人にはもってこいです。登場キャラ全員に好感が持てるのもポイントが高い。終始気持ちよく読むことができます。

本書には14編が収められていて、1編が1か月の計算。そして14ヶ月が経った最後に、ある出来事が起きる、という構成。

各話で起きる謎は、日常の謎と呼ぶにも些細すぎる謎です。自宅から玩具の電車が無くなったとか、冷蔵庫に貼られたメモの意味とか、その程度のもの。しかも、何か意外な真相が隠されているわけでもなく、拍子抜けするほどあっさり解決されます。

なので、謎解きを主眼に書かれていないのは明らかです。謎解き部分に関しては、退屈に感じる短編も多かった。

本書は自分も蒼林堂古書店を訪れた気になって、ミステリ談義と空気感を楽しむ作品。

そういう小説として楽しめ、尚且つ、読書案内としても楽しめるのがありがたいところ。店主の林雅賀のコラムという形で、全127作も紹介されています。

既読の作品も多くありましたが、結構古めの作品もあって面白く読めました。テーマ別にチョイスされているで、探しやすいです。

あとがき

非常に好感度の高い作品でした。ラストのちょっとした仕掛けについても、最後まで優しい作品。ほのぼのした雰囲気が好きな人におすすめ。

逆に刺激を求める時や、ミステリとしての驚きを得たい時には向いてません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました