小説家のかっこいいと思うペンネームとその由来

今回は個人的にかっこいいと思う作家のペンネームと、その由来についてご紹介したいと思います。
現代作家は普通の名前のようなペンネームが多いですが、特に昭和初期の作家には、これぞ作家というかっこいい筆名が多い印象です。
言葉をもじった駄洒落的な由来が面白くて好きですね。もじり方にセンスを感じます。
Inagaki_Taruho

昭和の小説家で代表作は『一千一秒物語』。
独特な感性の持ち主で、幻想的な話を多く書いている作家だから、足穂という名前は蛍をもじったんだろうと思いきや、なんと本名とのこと。そのことに驚きました。
飛行機に強い憧れを持っていて、天体に魅了されているところから、何となく宮崎駿や宮沢賢治と似通ったところがあるのかなあ、と思ったりします。
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海野十三(うんのじゅうざ)

本名 佐野昌一(さのしょういち)。

明治から昭和初期に活躍した小説家。主にSF小説や推理小説を書いており、日本SFの始祖の一人と評価されています。

麻雀が好きだったらしく〝麻雀は運が十〟と考えていた。それをもじって海野十三としたようです。
運が十さ→うんがじゅうさ→海野十三。
ただ、この他にも色々な説を本人が言ったため、はっきりしないらしい。〝じゅうざ〟という音の響きがかっこよくて好きです。海野十三は横溝正史や小栗虫太郎などの推理作家と親交が深かったそうです。

江戸川乱歩 (えどがわらんぽ)

本名 平井太郎(ひらいたろう)。

言わずと知れたミステリー小説界の重鎮。江戸川乱歩が日本のミステリ界にもたらした功績は計り知れません。小説だけでなく、推理小説についての評論、海外のミステリー作家の紹介など多岐にわたります。

類別トリック集成という、トリックをパターン別に分類した本も作成しました。
そんな江戸川乱歩の名前の由来は、アメリカの作家エドガー・アラン・ポーから来ています。彼の名前をもじって江戸川乱歩とつけたようです。
エドガー・アラン・ポーは世界で初めて推理小説を書いたとされる人物で、その作品は『モルグ街の殺人』。そのあまりにも意外な犯人は今でも有名です。
さらに、今ではお馴染みの探偵が天才、というイメージを作ったのもこの小説。主人公のオーギュスト・デュパンを原型として、後にシャーロック・ホームズが誕生し、以降そのイメージが受け継がれていきました。

黒岩涙香(くろいわるいこう)

本名 黒岩周六(くろいわしゅうろく)

明治時代に活躍した翻訳家、ジャーナリストです。アレクサンドル・デュマの『モンテクリスト伯』を、日本で初めて翻訳したことで知られています。その時の題名が『巌窟王』で、日本ではこの題名が親しまれていました。

他にもヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』を初めて翻訳したのもこの人で、『噫無情』という題名で出版されました。
ペンネームの由来については、〝黒い、悪い、子〟という説(くろい、わるい、こ→黒岩涙香)と、『紅涙香』という本を愛読していたからと言う説があります。どうやら前者は後付けらしいですが、こっちの方が面白いですね。

しかし不思議なのは、この『紅涙香』という本、検察しても情報が全く出てこないのです。明治時代の人とは言え、有名人が愛読した本の情報が見つからないのは解せない。本当に存在する本なのでしょうか。これこそミステリーですね。非常に気になります。

幸田露伴(こうだろはん)

本名 幸田成行(こうだしげゆき)

明治から昭和初期にかけて活躍した小説家。第一回文化勲章を受章しています。ペンネームの幸田は本名で露伴は露を伴侶とするの意から。

露伴は北海道から東京へ向かう際に金がなさすぎて、途中からは野宿をしながら歩いて東京へ向かったそうです。その時の経験が鮮烈でそう名付けたとのこと。
露にはあらわ、覆いが無いという意味があるので、こんな状態がずっと続く(伴侶となる)と思ったのかも知れませんね。いや、それにしても野宿しながら歩いて東京に向かうとは凄い根性だ。

二葉亭四迷(ふたばていしめい)

本名、長谷川辰之助(はせがわたつのすけ)。

明治時代に活躍した小説家、翻訳家。代表作としては『浮雲』、翻訳作としてツルゲーネフの『あひゞき』、『めぐりあひ』などがあります。

作家らしくて非常にかっこいいペンネームですよね。いったいどんな由来なんだろう、さぞかし高尚な由来なんだろうなと思って調べてみて驚きました。こんな由来だとはまったくの予想外。
自分自身を〝くたばって仕舞え〟と罵ったことから来ているとのことです。
くたばって仕舞え→くたばってしめい→ふたばていしめい(二葉亭四迷)。
何故そんな風に自分を罵ったかというと、処女作の『浮雲』を他人の名義(坪内逍遥の名義)を借りて出版したから。まだ無名だったし自信もなかったから、有名だった師匠の名を使ったわけです。そんな自分が恥ずかしくて卑下したのでしょうね。

久生十蘭(ひさおじゅうらん)

本名 阿部正雄(あべまさお)

戦前戦後にかけて活躍した小説家、ノンフィクション作家。博識で様々な作品を書いており、小説の魔術師と呼ばれました。小説だけでなく戦時中は従軍記者としてルポなんかも書いており、フランス語も堪能という多彩な人。その能力を生かしてフランス文学の翻訳もしています。

そんな久生十蘭の名前の由来は、パリ留学時代の師匠・シャルル・デュランのもじりという説もありますが、僕はもう一つの説の方が好きだ。
それは〝食うとらん〟をもじったというもの。くうとらん→
久(く)生(う)十(と)蘭(とらん)となり、苗字の久生の方にも説明がつくし、洒落も効いています。どちらにしても音の響きがかっこいいペンネームだと思います。

武者小路実篤(むしゃのこうじさねあつ)

昭和に活躍した小説家。とにかく名前のインパクトが凄い。そしてこれが本名というのだから驚きだ。小説を書く以外にも様々な活動をしていた人物ですが、中でも〝新しき村〟が個人的に興味深い。
武者小路実篤は自身の理想を体現するために、宮崎県の人里離れた山間部に一から村を作りました。宮崎県児湯郡木城村という場所で、ここは周囲を高い山々と川に囲まれ、舟を使わないと外部と行き来できなかったそうです。
そんなところで、仲間と共に家と畑を作り、人が住めるように整えていった。凄く興味深い話ですね。僕はミステリー小説が好きなので、こういう話を聞くと本格ミステリーの設定でありそうだな、とついつい思ってしまいます。
後にこの村はその半分がダムに沈むことになります。ますます魅力的な設定だ。

最後に

こうしてみると、苗字は本名で名前を変えている人が多いですね。僕の好みでピックアップしましたが、他にも文豪と呼ばれる人はペンネームにもセンスを感じます。

最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

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