『探偵映画』我孫子武丸 ほのぼのコージーミステリ

感想 ★★★★☆

映画の撮影現場が舞台のコージーミステリ。キャラ同士の掛け合いがユニークで読んでいて楽しいです。ミステリとしては大したことないですが、謎のあるコメディとして見ると面白い。キャラには好感が持てるし、気持ちよく読み進めることができました。

そして、みんながハッピーになる結末も後味が良くていい。ほのぼのした話や日常の謎系ミステリが好きな人におすすめ。

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あらすじ

鬼才の異名をとる映画監督が新作映画を撮影する。『探偵映画』と題されたミステリ映画で、ストーリーを知っているのは監督ただ一人。撮影は順調に進み、残すは犯人が明らかとなる結末部分のみとなった。

そこで予想外の事態に直面する。なんと監督が失踪してしまうのだ。演者とスタッフは大慌てで探し回るも結局見つけられず、自分たちで結末を推理し、撮影を再開することに。

はたして映画の犯人役は誰なのか、そして監督はどこへ消えたのか――。

 

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感想

物語の主人公はサードと呼ばれる助監督。一番立場の低い若者で、彼と記録係の女性がコンビとなって、問題解決に向け奔走します。監督を探してあちこち出向いたり、失踪が外部に漏れないよう苦慮したりしながら、映画の結末も考えます。大変な苦労ですね。

作中作の形で映画の内容が描写され、恋愛要素や映画についての蘊蓄もあり、いろんな要素が盛り込まれています。

でも、この話の見所は何と言っても、演者たちが自分を犯人役にしたがるシーン。みんなで話し合いながら映画の結末を推理するのですが、犯人役が一番おいしいため、みんな自分が犯人になるための推理を披露します。

率先して犯人になりたがるのが新鮮。本来ならいかに犯人にならないようにするか頭を悩ませますからね。こんな設定でもなければ、まず見ることができない。ユニークな設定を思いついたものです。

各人の推理は平凡なものから、荒唐無稽なものまで様々あって、くすりとさせられます。演者は出資金を出しているし、役者として成功するためにこの映画に賭けています。

そのため、トンデモな推理であっても、これが真相だと真剣に訴えかけます。みんながみんな自分の推理を推そうとして、ワーワー言ってる様子がコミカルで面白い。

何通りもの推理が披露されるので、そういう意味では多重解決ミステリのような赴きもあります。ただ、ミステリとして面白さを感じる推理はありませんでした。

そしてラストで監督が失踪した意図、映画の犯人役が誰なのか明らかとなります。無理のない真相ではあるものの、これについても特に驚きのトリックというわけではなかった。

理屈は通っているし特に不満はないけれど、あれだけ煽ったわりには微妙ですね。ミステリとしての結末よりも、その過程を楽しむ作品。

 

あとがき

映画についての蘊蓄もいろいろあるため、映画好きの人はより楽しめるでしょう。古い作品が多く、僕は知らない作品ばかりでした。この小説自体、発売されたのが1990年なので、仕方ないですね。

物語に関しては今読んでも古さは感じず、普遍的な良さがあります。

 

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