ギャンブル小説 『地雷グリコ』青崎有吾 あらすじと感想

 

感想 ★★★★☆

次世代の本格ミステリ作家として人気の青崎有吾。

その新作は短編集で、今回はギャンブルがテーマ。どの話でも趣向を凝らしたゲームが登場します。

ミステリの一要素としてギャンブルが出てくるわけではなく、がっつりギャンブル作品です。

なので好みが分かれるかもしれません。

各話で繰り広げられる頭脳戦、駆け引きは読み応えがあって面白かった。こういう勝負事が好きな人は間違いなく楽しめるでしょう。

主人公は派手な格好をした女子高生。普段は緩い感じだが、ギャンブルになると滅法強い。

その相方は真面目でまっすぐな同級生の女子。

このコンビの関係性は本格ミステリの探偵と助手を彷彿とさせます。

高校を舞台に繰り広げられるため、青春っぽさもあり、著者の得意とするところですね。

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あらすじ

『地雷グリコ』

 文化祭での屋上の使用権を賭けて、生徒会役員とギャンブル対決をする。
 勝負方法はジャンケンの勝敗で歩を進めるグリコ。

『坊主衰弱』

 カフェ店主とトラブルを起こした生徒を助けるため勝負をする。
 勝負方法は百人一首を使った神経衰弱。

『自由律ジャンケン』

 主人公と生徒会長、それぞれに思惑があり対決をすることに。
 勝負方法はオリジナルジャンケン。

『だるまさんがかぞえた』

 エリート進学校のギャンブルマニアとの対戦。
 勝負方法はだるさんが転んだ。

『フォールームポーカー』

 主人公因縁の相手と大金を賭け大勝負をする。
 勝負方法はポーカー。

 

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感想

本書を端的に表現するなら、良い意味でギャンブル漫画。

『カイジ』、『嘘喰い』、『ライアーゲーム』などが好きな人におすすめ。
それらの作品にあるような、ヒリつく駆け引き、盲点をつくような発想が本書にもあり、とても面白い。

各話で行われるゲームは、あらすじにある通り誰もが知っているものばかり。そこにちょっとルールを加味し、まったく違うゲームにしている点が凄い。

よくこんなの思い付くなあと素直に感心。まずゲーム自体が面白いのです。さらに展開も決着の付け方も面白いから、脱帽してしまいます。

その発想はなかった! という手法が度々登場し、目から鱗が落ちる思いでした。戦略を練った頭脳戦が好きな人は、きっと大満足するはず。

個人的には終始楽しく読むことができました。満足です。

ただ気になる点がないでもない。誰にでもおすすめ――というわけではないですね。

まずギャンブルに興味がない人は……どうなんだろう?

僕はギャンブル漫画もそこそこ読んでいて、ゲームのルール説明とかも慣れてますが、興味ない人はストレスに感じるかも。

この手の作品はやはりルールを正しく把握してないと楽しめないので、けっこう細かく説明されます。

そこまで複雑ではないし、図入りで説明してくれるので、親切な作りになってますけどね。

それでも面倒に感じる部分があるかもしれません。

そして視点人物がコロコロ変わります。ギャンブルの場合、相手が何を考えているかある程度分かった方が面白いので、効果的だと思う。

しかしその一方で、少し煩雑に感じる面が無きにしも非ず。漫画の場合は絵があるため、コロコロ変わっても混乱しませんが、文章だとこれは誰の視点なんだろうと、一瞬迷う時がありました。

その対策として、文章の前にマークを入れる親切設計にはなっています。

でもこれは言い換えれば煩雑になっているのを、作者も気になったからだと思う。

それともう一点。ストーリーやキャラに関しても漫画的です。

キャラの名前は〝射守矢真兎〟など、変換しても出ないような独特なものばかりだし、裏で大金を賭けたギャンブルをしているエリート校なんかも登場します。

こういう設定が好みじゃない人もいるでしょうね。

 

あとがき

上記に書いたように、本書はがっつりギャンブル作品です。でもギャンブルに興味がないからといって、スルーするのは少しもったいない。

ミステリ好きが大好物の、意外性や驚きを感じられる作品があるからです。気になった方は読んでみても損はないかと。

僕が一番好きだったのは『だるまさんがかぞえた』。これはほんと盲点だった。

 

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