ほのぼのミステリ短編集『我らが隣人の犯罪』  宮部みゆき  

感想 ★★★☆☆

ミステリから時代小説まで幅広い作品を上梓している宮部みゆき。そんな彼女のデビュー作『我らが隣人の犯罪』を含む五つの作品を収めた短編集。

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『我らが隣人の犯罪』

新しくタウンハウスに引っ越してきた三田村一家。周りは緑に囲まれ、都心まで三十分の好立地。三田村家は大いに満足していた。ある一つのことを除いて。

唯一にして最大の不満。それは隣人が飼っているペットの犬による騒音だった。昼夜を問わず狂ったように吠えたてる犬の鳴き声に、一家はほとほと困り果てていた。隣人に注意しても一向に改善される気配がない。

中学生の三田村誠はついに実力行使に出る。伯父と妹に協力してもらい、犬を誘拐することにしたのだ。決行の日、隣家へ侵入した伯父があるものを発見したことによって、事態はもう一つの展開をみせる。

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『この子誰の子』

嵐の夜、一人で留守番をしている「僕」の家に奇妙な客がやってきた。びしょ濡れの状態で赤ん坊を抱えた若い女だった。

女はなかば強引に上がり込んで、「この子は君の妹よ」とのたまう。女は「僕」の父親の愛人で、赤ん坊は父親との子だと言い張るのである。しかし「僕」はこの赤ん坊が父の子供ではないことを確信する。はたして女の目的はなんなのか……。

『サボテンの花』

卒業を間近に控えた六年一組の子供たちは、毎年恒例となっている卒業研究を、サボテンの超能力にしたいという。

他のクラスが真面目なテーマを扱う中、これはまずいと教師たちは猛反対。唯一彼らの見方になったのは教頭先生だけだった。教頭は反対する教師たちを何とか説得する。

その甲斐あって六年一組の研究テーマはサボテンの超能力に決定する。なぜ彼らはそんなテーマを選んだのか。研究発表会でサボテンの超能力を証明することができるのか。

『祝・殺人』

結婚披露宴に参加した刑事の彦根和男は、式場勤務の美人エレクトローン奏者から、ある相談を受ける。それは彦根が現在捜査中のバラバラ殺人事件に関することだった。

事件の被害者は、以前この式場で挙式した夫婦の関係者で、その式の最中に彼女は不審な点を目撃したという。さらに彼女は事件の推理まで開始する。

『気分は自殺志願』

推理作家の海野周平は、ある男から絶対にバレない自殺の方法を考え出してほしい、と頼まれる。詳しく話を聞く周平。男の境遇に同情した周平は、彼を救うために一計を案じる。

感想

全体にほのぼのした雰囲気ただよう短編集です。そんな中『祝・殺人』だけ他の作品と毛色が異なる。

一番ミステリらしい作品で好きなテイストですが、こういった雰囲気の短編集野中にあると、少し浮いてしまいますね。

すべて同じほのぼの系にした方が、まとまりの良い短編集になったと思います。

一番良かったのは『サボテンの花』。こういう話を安っぽいと感じない人間でありたい。読み終わった後そう思いました。

どの話も扱っている謎が日常の出来事なので、身近に感じられてリアリティがあります。とても読みやすく、誰にでもお勧めできる短編集。

ただ、そういうテイストなのでパンチに欠ける部分はあります。凄いトリックが使われているわけでもありません。

ちょっと空いた時間などに読みたい好感度の高い小説でした。

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