感想 ★★★☆☆
学園ミステリーアンソロジーの第二弾。今回は90年代生まれの作家で編纂されたようです。いずれも人気作家ばかり。
前作が良かったし、作家陣も本書のコンセプトに最適と思える人選で期待したのだけれど、思ってたのと若干違いました。
前作は青春らしさを感じられる爽やかな作品、後味の良いものばかりだったと記憶していて、そこに好感を持っていました。
今回は後味の悪いものや、重いものもあり、うーん……となってしまった。別にその手の話が嫌いなわけではなく、むしろ好んで読んだりもしてます。
ただ、気分が違う時に出てくると、おいしくいただけない。
どんなにこってりラーメンが好きでも、お蕎麦屋さんに行ってそれが出てきたら、いやいやちょっと待ってよっと言いたくなる。
僕がコンセプトをはき違えていた可能性もあって、何とも言えないけれど、本書は纏まりが悪いように感じた。
あらすじ
『その爪先を彩る赤』武田綾乃
演劇部のハイヒールが無くなったので探して欲しい――。
そう依頼された生徒会の一年生が、一風変わった先輩とコンビを組んで解決にのぞむ。
『東雲高校文芸部の崩壊と殺人』斜線堂有紀
文化祭で部誌を発行して達成感に浸る文芸部一同。だが、まったく予期せぬ悲劇に見舞われる。
部員の一人が殺害されてしまうのだ。果たして犯人は誰なのか。
『黒塗り楽譜と転校生』辻堂ゆめ
合唱コンクールに向け練習に励むクラスメイト一同。ある日、全員の楽譜の一部が黒塗りにされていた。いったい誰がこんな酷いことを――。挙動不審の転校生が犯人と疑われるのだが……。
『願わくば海の底で』額賀澪
東日本大震災で大切な人を失った美術部員の二人は、時が経ってもそのことをずっと引きずっていた。
同じく親族を亡くした人と行動を共にするうち、当時の様子と意外な真実が明らかとなる。
『あるいは紙の』青崎有吾
校庭の片隅にタバコの吸い殻が落ちていた。いったい誰がポイ捨てを。まさか生徒が。
犯人を突き止めるべく、新聞部の二人が調査に乗り出す。
感想
『その爪先を彩る赤』、『黒塗り楽譜と転校生』、『あるいは紙の』は日常の謎がテーマ。学園ミステリらしいノリがあって、期待した通りの作風でした。
『その爪先を彩る赤』は探偵コンビの設定がユニークだった。この短編だけでは短すぎて、その面白さが発揮しきれてなかったように思う。
『黒塗り楽譜の転校生』は中学生らしい甘酸っぱさを生かした謎と解決になっていて、話作りが上手かった。まさに青春ミステリという感じ。好感度が高い。
『あるいは紙の』は裏染天馬シリーズのスピンオフ。シリーズ作にも登場する新聞部の二人が主役を担っており、裏染と柚乃もチョイ役で出てきます。
謎とトリックに関しては、さすが青崎有吾といった感じで安定感があります。ただ、そこまで力の入ったものではなかった。
『東雲高校文芸部の崩壊と殺人』、『願わくば海の底で』は他と毛色が異なります。
『東雲高校文芸部の崩壊と殺人』は嫌ミス。タイトル通りですね。毒がある作品。
『願わくば海の底で』は重い作品。東日本大震災を扱ったものがあると思ってなかったし、ゆっくり進行するので読み進めるのがしんどかった。
終わってみれば印象に残る作品ではありました。この震災を扱うのは生半可な気持ちではできないと思うけれど、しっかりと書ききっていて力作と感じました。
あとがき
どの短編にも言えることですが、トリックを期待するようなタイプではないです。
物語としては上記に書いたようにそれぞれの良さがあるので、これはこれでありかもしれません。
1を読んでなくて2から読んでいたら、また印象も変わった気がしますね。
コメント