感想 ★★★★☆
閉ざされた空間で殺し合いが行われるデスゲームものです。先に映画の方を見てしまって、その出来が微妙だったので、今まで読んでいませんでした。なのであまり期待せずに読み始めたのですが、予想していたよりもずっと面白かったです。
あらすじ
ある実験に参加するだけで、時給11万2000円がもらえるという破格の仕事に応募した12人の男女。彼らは地下にある施設に7日間閉じ込められてその様子をモニターされる。
当然、普通の実験のはずがなく、殺し合いを促すようなルールが提示される。人を殺した場合は報酬が2倍に、人殺しの犯人を当てた場合は3倍になる。
彼らはそんなルールなんて無視して普通に七日間を過ごそうとするのだが、ある日死人が出てしまう。それがきっかけとなって疑心暗鬼に陥る一同。
日を追うごとに死人は増えていき、残ったメンバーはいったい誰が殺人者なのか推理する。
映画と小説の違い
閉ざされた空間で殺し合いが行われるといっても、登場人物たちがただ闇雲に殺し合うのではなく、夜が明けるたびに死体が発見されます。したがって、誰が殺したかは不明で、サバイバルホラーなどでよくある格闘シーンや殺人描写はないです。
なぜ殺されたのか、どうやって殺されたのか、そして犯人は誰なのか。それをちゃんと論理的に推理します。この辺りが映画とは全然違う。
映画版は確か閉じ込められた人たちが、ワーワー言いながら殺し合いを始めて、綾瀬はるかが実は・・・という流れでした。そういう『バトルロワイヤル』的な感じでしたよね。生き残りをかけて殺し合うサバイバルみたいな。
それに対して、小説の方はちゃんと推理があってミステリ小説としての楽しさがあり、まったく別の作り方をしています。
小説版はしっかりしたミステリです
小説版は本格ミステリの定番スタイルで、些細なヒントをきっかけに犯人に迫っていきます。その論理に矛盾はなく、納得のいくものでした。
12人の男女にはそれぞれ武器が与えられますが、誰が何の武器を持っているかがポイントになります。このことを利用したトリックが上手かった。映画だけを見て小説を読んでいない人は損をしていると思いますね。
本作はデスゲームというか、クローズドサークルの本格ミステリという色合いが強いです。もともと米澤穂信はミステリ作家なので、その辺りのやりかたは上手でした。僕はミステリ小説が好きなので、満足の高い一冊でした。
もちろんデスゲーム系の小説を探している人にもおすすめです。登場人物たちのやりとりなど、雰囲気が出ていて面白いです。
ただし、サバイバルホラーのような過激さを求めているなら、他を選んだ方がいいかもしれません。グロいシーンや手に汗握るような戦闘描写などはありませんので。
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