『完全恋愛』牧薩次

感想 ★★★☆☆


著名なミステリ作家・辻真先が別名義で書いた作品。一人の男の生涯を描いた肉厚な作品で、その中で三つのミステリ的な事件が起きます。

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あらすじ

主人公は画家の本庄究。一つ目の事件は彼が中学生の時に起こる。
第二次大戦が終わった混乱期に温泉宿で働いていた究は、そこで初恋を経験する。

相手は新しく越してきた画家・小仏の娘の朋音。美しい容姿の朋音は、温泉宿の主人や米兵に言い寄られたりして究は不安でたまらない。

そんなある日、事件が起こる。宿の常連である米兵が何者かによって殺害されたのだ。この事件で究は彼の人生を左右する衝撃的な体験をする。

二つ目の事件は彼が画家として頭角を現してきた昭和中期。福島の山奥で殺害予告をした犯人のナイフが、沖縄にいた被害者を刺し殺す事件が起こる。

この事件は不可能犯罪として未解決のまま放置される。

三つ目は昭和末期に起こった人里離れた別荘での溺死事件。この頃の究は画家として確かな地位を築いており、年齢も老人の域に達していた。

別荘で死んでいたのは究とも関わりの深い人物。容疑者と思われる者にはアリバイがあって結局事故として処理される。

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感想

第二次大戦から平成までを舞台にして、主人公の人生を描いたこの物語は、大河ドラマを読んでいるような壮大さがありました。

ミステリとしても楽しめるけれど、やはりこの作品は恋愛小説と見るべきかなと思いました。

普通のミステリと少し違うので、作者も名前を変えて出版したのかもしれない。

それぞれの謎はそれほど難しいものではなくて、だいたい予想通りでした。

一貫して描かれるのは究の朋音に対する思いで、それは純愛と言っていいでしょう。

初恋相手を生涯に渡って愛し続けた男。読み終わった後、彼のことをどう思うか意見が別れそうだ。

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