『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成 あらすじと感想 ネタバレあり

 

感想 ★★★★★

就活を舞台にしたミステリ作品。数年前に話題になり読もう読もうと思いつつ、今まで読んでいなかった。
それを今回ようやく読んだわけですが、とても面白かった。

あれだけ話題になるくらいだから面白いのだろうと予想はしていましたが、予想以上に面白かったです。

正直、疑問点がないわけじゃないですが、楽しめたので満足です。疑問点はネタバレにて。

浅倉秋成の作品を読むのは今回が初めてですが、素晴らしい才能の持ち主ですね。

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あらすじ

誰もが羨む人気IT企業・スピラリンクス。その最終選考に残った波多野祥吾とその他五人。

最終選考の課題はグループディスカッションで、選考当日までに最高のグループを築き上げ望む必要があった。内容いかんによって全員内定の可能性もあった。

そこで彼らは親交を深め、お互いを認め合い、自分たちこそ最高のチームだと思えるほどになった。

だが、選考日まであと数日と迫ったある日、内定者は1人だけになったと通達される。それでも彼らは、誰が受かっても恨みっこなし、フェアに戦おうと約束する。

そして選考当日、運命のグループディスカッションが始まる。最初は建設的に進んでいたものの、謎の封筒が現れたところで事態は一変。

その封筒には6人の裏の顔が書かれていたのだ。

いったい誰がこんなものを用意したのか。その犯人はこの6人の中にいる。裏の顔を暴露され、疑心暗鬼に陥る中、地獄のグループディスカッションが始まるのだった。

 

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感想

就活という設定にあまり興味を惹かれず先送りにしていました。それを後悔しましたね。もっと早く読めばよかった。

最近あまりミステリを読んでいなかったのですが、やはりミステリって面白いなと思わせてくれました。この感覚は久しぶりな気がします。

構成は一部と二部に分かれていて、一部で最終選考の様子が描かれ、二部では彼らの数年後の様子が描かれます。

読む前は最終選考の話だけと思っていたので、こういう作りなのに驚きました。

そしてこの構成がかなり効いている。

グループディスカッションの様子がまず面白い。いい人だと思っていた人物たちの裏の顔が暴かれる展開はスリリングだし、そんな中で繰り広げられる心理戦も見応えがあります。

そして迎える結末にも意外性がある。

そして第二部に突入すると、そのグループディスカッションが見直されます。本当にあれは正しかったのか、真実だったのか、それを追い求める内に次々とまた新たな展開を見せる。

ミステリとしてとても面白かったです。驚きの連続でした。漠然と予想付くものもありましたが、まったく予想していなかったものもあって、大いに驚かされました。

本書は伏線が宣伝文句になっていますが、その言葉に嘘はなかったです。確かにあらゆるところに伏線がちりばめられ、しっかり回収されます。

〝二度読みたくなる〟なんて謳い文句の作品は多々あって、大袈裟だなあと常々思っていますが、本書の場合はちゃんと当てはまります。

僕はあまり読み返しながら読んだりはしないのですが、本書の場合は何度か読み返しました。

人に勧めたくなる面白い本でした。

テーマも明確ですね。物語全編を通して、人にはいろいろな面があると訴えかけています。画一的な見方しかできないと真実へは辿り着けない。

ミステリの手法とテーマが融合していて非常によく出来ていました。かなり作り込まれている作品。

ただ、後半になると職業小説みたいな面が出て来ます。仕事をする上での葛藤、就活に対する主張みたいなものです。

主人公が苦悩する様子などが結構なページ数で描かれます。

ミステリだけを求める人からすると冗長に感じるかもしれません。僕は最初そう感じました。でも読み終わってみると必要な要素だったとも思う。

人だけじゃなく小説にもいろんな面がある、というメタ的は意味もあるのかもしれませんね。

 

あとがき

話題になるのも納得の作品でした。これから著者の他の作品にも手を伸ばしていこうと思います。

 

 

ネタバレ

疑問に思う点についてですが、不満と言っても少々気になった程度のもので、作品に対する評価を揺るがすほどではないです。

まず嶌衣織の障がいについて。

彼女が障がいを負っていると思わせる描写はなかったように思います。ある意味一番重要ともいえるこれに対して伏線がなかったのは、ちょっとフェアじゃない気がします。

それとも僕が気づけなかっただけでしょうか。もしそうだったらすみません。これでわかった人は凄いと思う。

次に各キャラの秘密について。

いじめと詐欺をした二人は、なぜあのディスカッションの場でちゃんと反論しなかったのでしょう。各人それぞれちゃんとした理由があったわけだからそれを説明すればよかったはず。

まあ、それをしたらミステリにならないと言われればそれまでですが。

あの場で何を言ったところで信じてもらえない、パニックに陥って言葉が出てこなかった、と解釈して僕は納得しましたが、不満に感じる人もいるかもしれません。

それと矢代つばさのキャバクラについても少し気になった。これは波多野の未成年飲酒と同じレベルかそれ以下の軽さだと思う。

にもかかわらず、いじめや詐欺と同列みたいな雰囲気になっていたのが若干ひっかかりました。

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