『十戒』夕木春央 あらすじと感想 ネタバレあり

 

感想 ★★★☆☆

昨年話題となった『方舟』の続編でシリーズ二作目。『方舟』が面白かったので期待して読みました。普通に楽しめたものの、期待を越えるほどではなかったです。

『方舟』の時も期待して読んで、その期待を見事に越えてくれただけに、少し残念。『方舟』と比較すると、だいぶ辛口評価して星3ですかね。

星4でもいいのですが、予想通り過ぎたと思う。

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あらすじ

リゾート開発の視察で無人島にやってきた9人。小規模な宿泊施設があるだけのその島で、島を吹き飛ばすほどの爆弾を発見し、一同は驚愕する。

不穏な空気が流れたものの、どうやら放置されているようで、そこまで深刻に捉えることはなかった。

だがその翌日、メンバーの1人が遺体で発見されたことで事態は一変する。

犯人からの書き置きで〝犯人探しをしてはならない、すれば島を爆破する〟と書かれていた。

そう言われるとみんな黙って従うより他なかった。

こうして奇妙なクローズドサークルと化した無人島で、第二、第三の殺人が起きてしまうのだった。

はたして犯人は誰なのか、そしてその目的とは――。

 

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感想

まず設定が魅力的でした。嵐で閉ざされているわけでも、電波が届かないわけでもないのに、外部と連絡が取れない。

何ともユニークなクローズドサークル。ある意味で犯人と他のメンバーが共犯関係になっているのが面白い。

通常だと犯人が何かミスをして証拠を残すことを期待しますが、本作の場合は逆に証拠を残さないことを期待します。

その証拠によって犯人がわかってしまうと、爆弾であの世行きですからね。お互いの信頼の上に成り立っている、厄介で滑稽な状況。

前作を想起させるタイトルとこの設定に、否が応でもハードルはあがりました。

作品の雰囲気、空気感は『方舟』と似ています。前作同様、僕はキャラに特別魅力を感じなかった。恐らく意図的に没個性にしているのでしょう。

それと、危機的な状況にもかかわらず、今一つ緊迫感を感じられない点も似ています。精神が不安定になるキャラもいるのですが、印象としては淡々と進んで行きます。

それがこのシリーズの特徴と言えるかもしれませんね。

結末に全振りしている感があるので、いったいどんな凄い展開が待っているのか、その点に俄然興味が湧きます。

そして肝心の結末ですが……、半ば予想通りでそれを上回るほどのひっくり返しはありませんでした。

もちろん、細かい部分までわかっていた訳じゃありません。でも、こうなりそうと思ったのがそのまま当たった感じ。

だからもう一つ何かあるんじゃないかと思ったんだけれど……。解決編の感想はネタバレにて。

 

あとがき

設定のわりに意外とシンプルな話でした。それだけに大きな反転を期待してしまった。なので少々物足りなさを感じたのは確か。

連続殺人の論理の部分は、なるほどと思いました。ただ、こちらについても『方舟』の方が緻密だったと思う。

良作ではあるけれど、『方舟』と同レベルのものを期待してしまうと、見劣りするのは否めないですね。

  

ネタバレ

解決編の犯人が判明するシーンで、「え?」と思いました。最初から綾川さんが犯人だと知っていた、と主人公が述べるところです。

何の前触れもなく唐突に言われたので、キョトンとしてしまった。

綾川さんが真犯人だろうと予想していたものの、こんな風に明かされるとは思ってもみませんでした。

実は起きていてずっと見ていた、ですからね。一人称なのでアンフェアとは言わないまでも、これはどうなんでしょう。

このアリバイがあるから、綾川さんを犯人から除外していた人もいると思う。真剣に推理しながら読んでいた人は、何だよそれと冷めちゃいそうだが。

フーダニットではなく、ハウとホワイが主眼なのかもしれないけれど、安直に感じてしまう。もっと違う明かし方をしてほしかった。

 

方舟のネタバレ含む感想

この作品を高評価している人の多くは、最後の最後で明かされる真相による部分が大きいと思う。

そう綾川さんの正体についてです。

これはフーダニットの上乗せともいえて秀逸。ただ、こちらについても何となく予想がついてしまった。

彼女の性格や雰囲気から、(あれ、もしかしてこの人って……)と思って、途中で『方舟』を確認したほどです。

すると本書では全員苗字しか書かれていないし、一度そうだと思うと、もうそうにしか思えませんでした。

だから、ああやっぱりそういうことかと、答え合わせした気分でカタルシスは得られなかった。

特徴的なセリフで忖度させるやり方も、他の作品で見受けられますしね。

もし続編が出るなら、それは傑作になる予感がするので期待したいですね。本書と同じやり方はもうできないはずなので、まったく新たな仕掛けをしてくるはず。

次はどんなものを見せてくれるのか非常に楽しみ。

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