
様々なタイプの作品を残している筒井康隆。多才な作家として真っ先に思い浮かびます。
SF、ホラー、ファンタジー、ミステリなどジャンルも様々で、作風もエログロから爽やかな青春ものまで本当に多岐にわたる。
いったいどれを読めばいいんだと悩んでしまう人も多いと思います。
そこで今回はおすすめの作品を8作選んでみました。膨大な数の著作があって僕も全然読み切れてないんですけどね(汗)。
尚、短編を1つ1つ挙げるときりがないので、短編は短編集という形で選出しています。
筒井康隆の作品には文学的、あるいは哲学的で難解なものもあって、読みにくさを感じるものもあります(特に古い作品)。
今回ここにあげたのは読みやすいものばかりなので、そういう意味でもおすすめです。
パプリカ
精神医学と夢がテーマのSFホラー作品。SFと言っても、現代が舞台で科学的な難しさはないので普段SFを読まない人にもおすすめ。
ストーリー性があってキャラも立っているのでぐいぐい読ませます。ホラーの要素もあってエンタメ作品としてとても面白い。
アニメで映画化もされており、そちらも有名ですね。
旅のラゴス
こちらはSFファンタジー作品。一つの場所に定住することなく、旅をし続けることを選んだ男の物語です。
主人公のラゴスは世界中を旅する中で、ある場所では奴隷になり、またある場所では王様になったりします。
旅の目的は、人類の先祖が残した書物を探す、かつて恋した相手に会う、など理由は様々。
冒険や旅が好きな人はきっとこの小説に魅了されるでしょう。ページ数は少ないのに大長編を読んだ後のような満足感を得られます。
時をかける少女
言わずと知れたSFの名作。様々な媒体で映像化され、いまさら紹介する必要なんてないレベルですね。
でもそれゆえ、原作まで手を伸ばしている人は意外と少ないのでは、という気もします。
原作は100ページほどの中編。正直今読むと古さを感じてしまいます。なので今初めて『時をかける少女』に触れるなら細田守監督のアニメ映画がいいと思います。
ただ本書には他にも二作収録されていて、どちらも良作なのでおすすめの1冊です。この二つもアニメ化してもらいたいですね。
七瀬ふたたび
超能力者たちの戦いを描いたエンタメ作品。主人公の七瀬は相手の心が読めるテレパス。他にも予知能力者、テレキネシス、タイムリーパーなどが登場します。
七瀬たちが様々なピンチに遭遇し、それを超能力の力で乗り切る話。最後には超能力を撲滅せんとする組織と、己の存亡をかけて戦います。
よくある話といえばよくある話ですがシンプルに楽しめます。超能力系の話が好きな人におすすめ。
ちなみに本作は七瀬シリーズと呼ばれるものの1冊ですが、それぞれ独立した話なので本作だけでも楽しめます。
ロートレック荘事件
山奥にある別荘での殺人事件を描いた本格ミステリ作品。本作は何と言ってもトリックが有名な作品。畑違いのはずなのにミステリ作家顔負けの作品を書けてしまうんだから凄い。
そしてトリックだけでなく物語としても面白いです。著者の深い洞察力を感じられる部分があるし、キャラクター造形も興味深いです。
物語としての意外性もあっておすすめです。ミステリ好きは必読の1冊。
ヨッパ谷への降下
こちらはファンタジー系の作品が収められた短編集。どの作品も筒井康隆らしい奇抜さがあって粒揃いです。
エログロから幻想的なものまで、ここでしか読めないようなものばかりで、その着想に驚かされます。
特に『エロチック街道』と『ヨッパ谷への降下』がおすすめ。
佇む人 リリカル短編集
こちらも短編集で本書には悲哀を感じられるタイプの作品が多く収められています。エログロ系はないのでその手の話が苦手な人も安心して読めます。
20作もあるので中には微妙なものもあるのですが、『佇む人』と『母子像』は別格の面白さ。とても奇妙で怖くもあり、それでいて悲哀も感じられる傑作ですね。
ビアンカ・オーバースタディ
筒井康隆が初めて書いたライトノベル作品。ラノベの代表とも言える涼宮ハルヒを受けて書いたらしく、表紙も同じイラストレーター。
色々書いてる人だけれど、まさかラノベを書くとは思ってもみなかったので、非常に驚きました。けれどもそこは筒井康隆。当然ながら一筋縄ではいきません。
ラノベのフォーマットで無茶苦茶なことをやっています。皮肉というか、悪ふざけというか、いつもの筒井康隆のアクがふんだんに入っています。なので賛否が分かれるのは間違いないです。
筒井康隆を知ってる人からすると平常運転なんですが、知らない人がイラストに惹かれて読んだら、何だこの作家となるでしょうね(笑)。
あとがき
以上のようにいろんなタイプの作品を挙げてみました。こうして改めてみると、本当に多才な作家だなと思いました。
ただいろんなジャンルを書けるだけでなく、そのジャンルのルールに則って傑作を書けるのが凄いい。
著者の特徴といえばメタ、皮肉、エログロなど癖の強さだと思うけれど、そういうのを一切感じさせない真面目なものも書ける。
そしてもちろん癖全開で面白いものもたくさんある。
ジャンルのみならず、テイストも自由に使い分けられる稀有な作家ですね。

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