クローズドサークルの本格ミステリ『グラスバードは還らない』市川憂人

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感想 ★★★☆☆

デビュー作の『ジェリーフィッシュは凍らない』から続くシリーズの第三弾。刑事のコンビが活躍する本格ミステリシリーズで、各種ミステリランキングに入ったりもしています。

前作の記事はこちら↓

期待の本格ミステリ作家『ブルーローズは眠らない』市川憂人 ネタバレあり

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あらすじと設定

時代設定は1980年代ですが、科学技術は現代よりも進んでいるというか、独自の技術があるのがこのシリーズの舞台です。本作はガラスがテーマとなっており、透明になったり不透明になったりします。

構成はこれまでと同様に、マリアと漣のパートと事件のパートの二つに分かれるスタイル。前二作と違ったのはマリアたちがリアルタイムで事件に関わる点。さらにアクション映画やパニック映画みたいなスリルを加えていました。

爆弾が仕掛けられたビルにマリアが閉じ込められてしまい、退路を完全にたたれます。はたしてマリアはどうなってしまうのかという状況。脱出の仕方にしてもダイハード的なダイナミックさだった。

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本格ミステリではお馴染みのクローズドサークル

事件パートの方は本格ファンが大好きなクローズドサークルです。それも『そして誰もいなくなった』と同じスタイル。

迷路のように入り組んだガラス張りのフロアに、男女のグループが閉じ込められ、一人また一人と犠牲者が出て、結局最後には全員死亡します。

この設定は処女作の『ジェリーフィッシュは凍らない』もそうでしたね。著者はクローズドサークルにこだわりがあるのでしょう。僕もこの設定は好きなので、これからも頑張ってもらいたいものです。

彼らが閉じ込められる閉鎖空間は大富豪が作ったもの。かなりおぞましさがあります。ミステリにおいて大富豪のすることは、だいたいおぞましいと相場が決まっているので、ある意味その期待は裏切りません。

ちなみに、この大富豪は何となくトランプ大統領を想起させます(笑)。爆破されるビルもトランプタワーっぽい気がしました。

トリックについて

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トリックに関しては面白いと思うものと、さすがにこれはちょっと・・・と思うものが両方ありました。オーバーテクノロジーが出てくるのがこのシリーズの特徴といっても、これがありならなんでもありになってしまうのでは、という気がする。

読んだ人なら分かると思うけど、最後に出てくるあれのことです。最新科学に疎い僕にとっては、ドラえもんの道具レベルのものに思えた。

京極夏彦の姑獲鳥の夏を読んだ時のことを思い出しました。そんなのありかよと、思わずに声に出してしまいましたよ。

総評

ストーリーについては楽しめました。結末は悲哀です。これはシリーズの特徴と言えるかもしれません。クローズドサークルとダイハード、対極にあるように思える二つを融合させていたのはユニークな試みだったと思います。

なので概ね満足だけれど、上記に上げたトリックに関しては気になりますね。

第一作は気球、第二作はバラ、そして今作はガラス。次はどんなオーバーテクノロジーが出てくるのか楽しみです。早く次回作が読みたいですね。

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