感想 ★★★★☆
あらすじ
最初は順調だったものの最終日に機械のトラブルにより雪山に不時着。外部と完全に隔離された状況で、乗組員六人は次々と殺害され、終には全員が他殺体で発見される。
この不可解な事件を女刑事マリアとその部下の青年、漣が捜査する。
ガチガチのクローズドサークル
クローズドな状況で次々と連続殺人が起き、それをその中にいた探偵が解決する、という話ではなく、登場人物全員が死亡します。この設定は『そして誰もいなくなった』から始まり、日本では『十角館の殺人』などが有名。
さて、この状況の場合、犯人は閉じ込められた六人の中にいたのか、それとも外部からやって来たのか、そこがポイントになります。
ここで犯人が使ったトリックの内、一つは予想がつきました。これは本格ミステリを読み慣れていれば勘づく人は多いと思う。なぜなら、一つだけ明らかに特殊な死体があって、そのようにした理由が最も基本的な理由だったから。
こちらについての方法がわからなかった。メインはこのトリックといっていいでしょう。種明かしをされて、なるほどと気持ちのいい驚きを得られました。本格ミステリに求める一番大事な部分を満たしてくれます。だからトリックに関しては不満はないです。
動機について
否定的な意見が多くなりそうなのが動機に関して。この理由だと動機が弱いとの意見が出ても仕方ないと思う。とはいえ、この手の作品では死が軽いので、動機が弱くてもそこまでの違和感は覚えなかったですね。
それをあの理由で手に入れたのが納得しかねます。動機よりもよっぽど弱い。もっと強いエピソードを用意しておかないと、とても納得できるものではない。
ここまで事細かに書かれると反対に嘘っぽくてご都合主義な印象が強まる。こんな風に事が運ぶなんて不可能だろうと思えてくるのだ。ゆえに簡潔にするか、登場人物たち会話の中でさらりと説明するだけで充分だったと思う。
最後に
以上のように不満点もある作品でした。それでもこの設定で驚きをもたらしてくれたので星四つとしました。本格好きなら読んで損はないです。
キャラクターについて触れておくと、探偵役を務める刑事コンビにはあまり魅力を感じなかった。これは登場回数が少なかったのもあるかもしれません。
本作はジェリーフィッシュ側と刑事側が交互に語られる設定で、主人公たちにずっと寄り添うタイプではなかった。さらに刑事達は聞き込みが主で、感情移入できるほどの何かはなかったです。
続編も出ているようなのでそちらがどうなっているか気になるところ。期待できる作家なのは間違いないでしょう。
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