感想 ★★★☆☆
話題となった『ジェリーフィッシュは凍らない』の続編にあたる作品。前作に登場した刑事のコンビが難事件に挑みます。今回は密室での殺人事件。いろいろ盛り込まれた本格ミステリらしい内容でした。
あらすじと構成
幻の青いバラを生み出した博士がその生育場所である温室で殺害される。温室内は密室、被害者の首は切断され、周囲は青いバラで覆い尽くされていた。
おまけに意味深な血文字まで残されているという状況で、本格ミステリの様式美ともいえる不可解で魅力的な謎が提示されます。
メインとなるのは現代に起きたこの密室事件で、刑事コンビのマリアと漣が捜査します。そしてもう一つ、過去に起きた一家惨殺事件とが交互に語られます。
一家惨殺事件の方は、ホラー小説として読むことも出来て完成度が高かった。むしろ密室事件のパートよりも楽しめました。
その理由はストーリーテリングが優れていたからだと思う。独立した話として読んでも、短編ホラーとして充分成立しています。
その二つの物語が終盤になって一つに繋がるというスタイル。この構成は前作と同様ですね。
ネタバレあり トリックと動機について
前作同様トリックに関してはちゃんと納得できるものになっていました。ただ、こちらも前作同様、動機に関してはうーんと首をひねりたくなった。
本格ミステリの場合、トリックが優れていれば動機に関してうるさく言わないのが、僕の基本的なスタンス。それでも少々気になりました。
本作で不満が出るならそこだと思うので触れておきたいと思います。
密室事件に関しても、一家惨殺事件に関しても、この動機では他にやりようがあったんじゃないかと思ってしまう。真犯人の動機については、青バラを手に入れるためにそんなことまでするか？ と感じてしまいます。
それに、この人物はもっと大物にした方がよかったんじゃないでしょうか。例えば政財界の大物とか。それならここまで大掛かりな真似をするのも理解できます。
研究者の茜を殺害した理由も弱い。口封じが主な理由とのことですが、彼女はすでに警察に証言しているため、その後に殺しても意味ないのではないか。
ある人物に罪をなすりつけるため、だとしても弱く感じます。
終わりに
皆さんご存じのように本格ミステリの場合、探偵役とその助手のキャラクター性はとても重要です。本作のコンビには、まだファンになるほどの魅力を感じていません。
このジャンルの探偵は奇抜なキャラが多いですからね。キャラについても掛け合いについても、大人しい印象を受けます。
それと相変わらず書き方が独特ですね。大事な文章の前に空行を入れるのも必要ないと思うし、強調するための傍点も多過ぎます。
ストーリーや物語の締め方は好みでした。悲しくて切ない話は嫌いじゃないので、読後感はよかったです。
まだ二作目なのに自分のスタイルを確立しているのは凄い。これからが期待の本格ミステリ作家です。応援します。
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