前代未聞の犯人 『双蛇密室』早坂吝

hebi

感想 ★★☆☆☆

援交探偵の上木らいちが活躍するシリーズも、これで四作目となります。これまでの作品同様、一筋縄ではいかない結末が待っています。いや、一筋縄でいかないどころか、とんでもない結末ですね。

この真相を当てられる人は、1%もいないんじゃないでしょうか。そう感じるほど奇想天外です。ただ、個人的にはあまり好きではないですね。

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あらすじ

上木らいちの客である藍川刑事は、昔からたびたび奇妙な夢を見ていた。真っ暗な中で、二匹の蛇に襲われる恐ろしい夢。そのせいか藍川は蛇が大の苦手で、見ただけで身動きが取れなくなるほど。

藍川はその話を何気なく上木らいちにするのだが、彼女の指摘によって自身の幼少期に疑問を持つ。両親が何かを隠していると踏んだ彼は、過去と向き合う決意をする。そして実家に帰省して両親に尋ねると、予想だにしない答えが返ってきた。

自身の出生の秘密。二つの密室事件。藍川は謎のまま放置されたこの事件の真相を、らいちと共に調査する。

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驚きのトリックと犯人

密室事件は二つあって、一つはマンションの最上階で蛇に噛まれる事件。マンションはオートロックで玄関には管理人もいる。窓は開いていたものの、上からも下からも侵入は不可。犯人はいったいどんな手を使い、蛇を侵入させたかが問題となります。

もう一つは、豪邸の庭に建てられたプレハブ小屋での毒殺事件。こちらも蛇の毒によるものだが、プレハブの周りは雨でぬかるんでおり、人はおろか、蛇の侵入した形跡すらないという状況。

どちらもバカミスと言っていい類いのトリックです。驚天動地のトリックとされているのは、プレハブ事件の方で、確かにこの可能性はまったく想像すらしていなかったです。

だがしかし、驚かされた気持ち良さよりも、さすがにそれはないだろう(笑)という感想の方が大きかったです。バカバカしさもさることながら、あまりにも希少な例に頼りすぎている。

これまでのシリーズ作では、バカミスじみていてもそれなりに説得力がありました。それに対して、本作は希少な例の積み重ねで成立しており、こういう可能性もゼロではありませんよね? と言われている感じ。

何というか、ミステリというよりも、ある種の実験をしているような印象を受けました。それゆえ、いくら予想外であっても、カタルシスを得られなかったです。

全体の感想としては

トリックの奇抜さはかなりのものなので、それ目当てで読むのはありです。ただ物語としては正直微妙でした。完全にメイントリックのために作られた話で、それ以外が雑に感じて、あまり読み応えを得られなかったです。

単純にページ数が少なかったというだけでなく、内容もあっさりしていたような印象。DV、SMなどの要素が出てきたにもかかわらず、そう感じました。

このシリーズで言えば、デビュー作の『○○○○○○○○殺人事件』はストーリーも面白かったので、比較すると残念に感じます。著者がぶっとんだ発想力を持っているのは、もう誰もがわかっているので、次は物語としても唸らせてほしいところ。

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