『孤島パズル』有栖川有栖 学生アリスシリーズ2のあらすじと感想

南の島

感想 ★★★★☆

学生アリスシリーズの第二弾。有栖たちが旅に出掛けると、殺人事件に巻き込まれる王道パターン。今回は南海の孤島が舞台です。

もちろん外部との連絡は絶たれる安心のクローズドサークル。青春ミステリとしての良さもあり、本格ミステリとしても面白かったです。

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あらすじ

推理研に新たに加わったマリアをと共に、有栖と江神部長は南海の孤島に向かう。そこでは宝探しパズルがあって、推理研としての夏休みに最適と判断したためだ。

有栖たちは夏の南の島でのバカンスを楽しむが、嵐となった夜に殺人事件が起きてしまう。彼らは事件の謎を解けるのか。そして宝探しパズルの正解を導けるのか。

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感想

物語の語り手は前作同様、「僕」こと有栖川有栖。先輩の江神、同級生のマリアと共に、事件の謎に挑みます。

今回は殺人事件の他に宝探しというパズル要素も加味されています。灼熱の太陽の中、三人は自転車を繰り出し、宝を探すべく奮闘する。このパートに夏っぽさと青春感が満載で、読んでいて楽しい。

南の島ということもあって、海で泳いだりもしてまさに青春小説といった具合。だがしかし、南の島だからそういう描写も入れておこう、という安直な理由で海が出てくるわけではないです。

本作では重要なエレメントとなっています。

それにしても、夏の南の島での宝探し、とても魅力的な設定ですね。学生時代にこんなことをしたら、さぞ楽しいでしょうね。憧れます(殺人事件に巻き込まれるのは勘弁ですが)。

三人の爽やかな旅の一幕と相違して、殺人事件はライフルで体を打ち抜かれるという陰惨なもの。密室内で親子が撃ち殺されるところから、連続殺人はスタートします。

本作でも終盤に読者への挑戦状が挟まれています。犯人を指摘し得るデータは出そろったから、当ててみろというわけだ(僕は完璧に当てることはできなかった)。

犯人特定に至るまでの論理も鮮やかだった。やはりこういう些細な点をきっかけに、論理的に謎を解決するやり方は抜群に上手いですね。

エラリー・クイーンが好きな著者だけに、拘りを感じます。

そして宝探し部分もよく作られていたのが印象的。アドベンチャーゲームとかでありそうな謎解きというか、仕掛けというか、それのクオリティも高くて面白かった。

クローズドサークルのミステリとしても、宝探しのパズルとしても楽しめる良作。

あとがき

前作に登場した推理研のメンバーはおらず、今回は三人だけ。ワイワイ感は薄まりますが、紅一点のマリアがいることで、前作とはまた違った良さがあります。

読後のしんみりする終わり方も青春らしくてグッド。夏に読みたい1冊ですね。

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