古典部シリーズ 『いまさら翼といわれても』米澤穂信

tsubasa

感想 ★★☆☆☆
 
青春ミステリとして人気の古典部シリーズの最新作。本書には六つの短編が収められており、古典部メンバーの過去や価値観などが掘り下げられています。

中でも折木と井原が顕著。ゆえにキャラに愛着のあるシリーズファンにとっては満足感のある一冊。初見の人は避けた方がいいです。


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あらすじ

『箱の中の欠落』 
生徒会長選で投票数が水増しされており、その方法を推理する。

『鏡には映らない』 
折木と伊原の小学校時代のエピソード。卒業制作で折木が不正をした本当の理由が明らかになる。

『連峰は晴れているか』 
教師がとった行動に関する掌編

『わたしたちの伝説の一冊』 
伊原についての物語。漫画に対する想いや漫画研究会のいざこざ。

『長い休日』 
折木がどうして〝やらなくていいことはやらない〟というモットーを持つに至ったか明らかになる。

『いまさら翼といわれても』 
合唱コンクールでソロパートを務めることになった千反田。しかし予定時間になっても彼女が集合場所に現われない。仲間たちは彼女の行方を捜して奔走する。そして千反田の想いが明らかになる。

似たような青春ミステリならこんなのもあります。

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ミステリとしては

ミステリー色は極めて希薄で謎とその解決を楽しめる話はないです。『箱の中の欠落』が短編ミステリらしい作りになっていますが、小粒感が否めない。

『鏡には映らない』も謎はあるけれども簡単過ぎます。ミステリとして楽しむ話ではなく、あくまで折木のことを知るためのエピソードという感じ。

他の短編には謎らしい謎は出て来ないのでミステリ目当てで読む本ではないですね。

青春小説としては楽しめます

古典部シリーズは、回を重ねるごとにミステリから純粋な青春ものへとシフトしています。各キャラが抱えている悩み、将来への不安などを丁寧に描いているため、同年代の人は特に感情移入できるかもしれません。

とりわけ、本作では折木と伊原にスポットがあてられており、各編の語り手もどちらかが務めています。

個人的にはキャラが下す判断、考え方で今一つ共感できない部分がありました。理解はできるけれど、結局自分のことしか考えてないように感じられた。

まあ、もともと皆、聖人君子みたいな良い人間ではないので、この方がリアリティがあるかもしれないし、読む人の年齢によっても感じ方は変わってくるでしょう。

だからそれはいいとして、謎解きの面白さがなくなったのが、ミステリ好きとしては残念ですね。

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