特殊な学園ミステリ 『セーラー服と黙示録』 古野まほろ

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感想 ★★☆☆☆

架空の日本を舞台にした本格ミステリ。シリーズ化もされており、本作はその第一作にあたります。

僕は続編である『背徳のぐるりよざ』を先に読んでいて、それが面白かったので一作目も読んでみることにしました。

特徴は何と言っても、フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットの三つを、別々の人間に解決させるところ。

 

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あらすじ

孤島に建設された聖アリスガワ女学校は、厳格なミッション・スクールでありながら、日本随一の探偵養成学校でもあった。

そんな特異な学校の特別問題に主席と次席の二人が挑む。

問題は〝大鐘楼の密室において主(しゅ)にもっとも近づけ〟、という何とも抽象的なもの。

立会人が見守る中、二人は同じつくりの大鐘楼二つにそれぞれ入っていく。そしてその翌日に、二人とも死体となって発見されるのだった。

現場は密室で、十字架に磔にされるという不可解極まる状況。

この事件の解明に臨むことになったのが、美しい三人の女学生。彼女達はそれぞれが得意とする観点から事件を紐解いてゆく。

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物語の設定

作品の世界観が独特で前半部分はその説明に当てられています。

この世界ではカトリックの枢機卿に日本人がいて、学園がある孤島はヴァチカンの管轄。そして探偵が士業の地位で、警察と同等の捜査権を有しています。

それらのことが学校に通う主人公の日常を通して語られます。個人的にはなかなか物語に入りこむことができなかったです。宗教にあまり興味がないため、世界観に惹かれることはなかったですね。
肝心の事件についてですが、謎の提示の仕方は抜群でした。

二つの大鐘楼はともに密室状態。磔にされた十字架は地上75メートルの屋根の上。

しかもAの大鐘楼に入った者の遺体がBの大鐘楼で見つかり、Bの大鐘楼に入った者の遺体はAの大鐘楼で見つかる。どう考えても不可能な状況なのだ。

それこそ神様でない限りこんな芸当は無理でしょう。この謎には引き込まれました。いったいどんな驚愕のトリックが使われているのかと、ワクワクさせられました。

トリックの感想

しかしながら真相は少々期待外れ。犯人候補が限られているため予想するのは難しくないし、この人物が犯人だとそのまんまで意外性がないです。

事件の性質を考えると、フーの部分はこれで仕方ないとして、ハウの部分があれだとがっかりしてしまう。

催眠術を使って意のままに操ったと変わらないレベルだし、まったく関係のない第三者を介入させるのもどうかと思う。

確かに説明はできているけれども、本格ファンが望むトリックではないはず。

あとがき

文体、キャラクター、設定等がアニメや漫画みたいなので、かなり人を選ぶ作品です。堅い小説が好きな人は間違っても手にとってはならない。

その反面、こういう系が好きな人はとことんハマる可能性があります。各キャラクターには特徴があるし、学校での暮らしに時間が割かれているので、青春要素もありと云えますかね。

不可能犯罪に期待した僕としては残念な作品でしたが、続編『背徳のぐるりよざ』はなかなかの出来だったので、ミステリ好きの人にはそちらをおすすめします。

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