『月光ゲーム』有栖川有栖 学生アリスシリーズ1のあらすじと感想

青い月

感想 ★★★☆☆

数々の名作ミステリを書いている有栖川有栖のデビュー作で、学生アリスシリーズの第一作目。本格ミステリの王道ともいえるクローズドサークルものです。

閉ざされた空間で次々と発生する殺人事件を、探偵役が論理的に解決するお話。学生が主人公で青春ミステリとしても楽しめます。

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あらすじ

夏合宿で山奥のキャンプ場にやって来たミステリ研究会は、偶然居合わせた他グループと共にキャンプを楽しんでいた。だが、予想外の事態に遭遇する。山が噴火し、陸の孤島となったキャンプ場に取り残されてしまうのだった。

そんな絶望的状況の中、連続殺人事件まで発生してしまう。いったい誰が犯人なのか、疑心暗鬼に陥る一行。はたして彼らは無事、この地獄と化した山から生還できるのか。

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感想

本作は「僕」こと有栖川有栖の一人称で物語が進んでいきます。前半部分は探偵役の江神二郎やミス研仲間と共に、キャンプを楽しむ様子が描写されます。

ワイワイした面白おかしいやり取りが繰り広げられ、学生サークルらしい楽しげな雰囲気を存分に味わえます。こういうのが青春ミステリの良さでもありますね。

その後火山が噴火し、キャンプ仲間の女子が失踪したことにより、だんだんとその様相が変化していきます。ここからはクローズドサークル系ミステリの雰囲気になります。

天変地異による身の危険に加え、殺人事件まで起きるのだから、とんでもない状況設定ですね。クローズドサークルの場合、どういう理由で外部との接点が絶たれるかも大事な要素ですが、火山の噴火とは驚きですね。

嵐や雪で閉ざされるのが定番の中、これは今まで読んだことありません。その設定に惹かれたのが読むきっかけですね。

本書には終盤に読者への挑戦状が挟まれています。本格ミステリでは時折この趣向が使われますね。

その時点で犯人を特定するためのデータは揃ったから、読者も犯人当てに挑んでね、というもの(ちなみに僕は当てることができなかった)。

解決部分でそれまでの伏線がしっかり回収され、なるほどと納得させられます。本格ミステリとしての技術的な部分はさすがですね。

不満な点は、登場人物が多すぎることと人物描写には関して。主人公の「僕」は、ある女性に恋をするが、もしその子が犯人だった場合、「僕」は全力で彼女のことをかばうと言っていす。

さすがにそれはいかがなものかと思うし、その決断を下すにしても、もっと苦悩するのが普通だと思う。感情で物事を判断する青臭さで、学生らしさを表現した可能性もありますけどね。

そして連続殺人犯の動機が弱いです。新本格でデビューした作家の初期作品には、人間が描けていないとの批判がされていたようですが、本書はどうなんでしょう? 動機を読んだ時にこの事を思い出しました。

タイトルに月光〝ゲーム〟とついていることからも、その辺はあまり頓着せず、純粋に本格ミステリとしての面白さを追求したのかもしれませんね。

あとがき

いくつか気になる点はありましたが、基本的には満足。青春ミステリが好きな人は楽しめると思います。人気シリーズとなったも納得ですね。

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