
感想 ★★☆☆☆
『家族八景』、『七瀬ふたたび』に続く、七瀬三部作の完結編。過去二作が連作短編集だったのに対し、今回は長編。
『家族八景』から『七瀬ふたたび』へのテイストの変化にも驚きましたが、今回も『七瀬ふたたび』からまったく別ジャンルの話になっています。
『七瀬ふたたび』の純粋な続編を期待した方はがっかりするかもしれません。超能力バトルものとはまったく別の話です。
SFはSFなんだろうけど、形而上的な話で神的な存在が登場します。そして実験色も強い。
正直僕はあまり楽しめなかった。
あらすじ
高校の教務課職員として働く七瀬は、気になる生徒を見つける。香川という名のその男子生徒の周りで、超能力としか思えない現象が次々と起きているのだ。
彼のことを調べる内、超能力なんて次元を遙かに超えた大いなる〝意志〟の存在に気付く七瀬。さらに驚くべきことに、七瀬は香川に恋してしまうのだった。
互いに惹かれ合う二人。これは〝意志〟の力に違いなかった。はたして意志の目的とは――、七瀬の恋の行方は――
感想
今回も再読です。内容はまったく覚えていませんでした。筒井康隆らしい面白い試みがいろいろあって、そういう意味では楽しめました。
テーマもそうですし、文字組で遊んでみたり、()を多用して表現してみたり、とても筒井康隆らしい作品だったと思います。
でも純粋に話として楽しめたかというと、楽しめなかった。
上位存在によって七瀬と香川が結ばれる過程が描かれるだけなので、僕には興味がない分野です。
心理学的、哲学的な話が好きな人にはおすすめです。
自分とは何なのか、自分の意志なんてものが果たしてあるのか、そんな存在論的なことを考えたい人は
興味深く読めるでしょう。
『エディプスの恋人』というタイトルも秀逸。まさにその通りの内容でした。なので心理学や哲学に興味がある人は楽しめると思います。
ラストシーンについてはよかった。ネタバレになるので書きませんが、前作『七瀬ふたたび』に関する話が出てきます。これについてはなるほどと思いました。
こういう風に繋がってくるのかと納得しました。
さて三部作の再読もこれにて終了です。どの作品も同じ主人公でありながら、アプローチの仕方はまったく違います。
それを意図して作られたシリーズで、そこが面白いポイントでもありますね。
七瀬らしさ、というのも変ですけど、彼女の話として一番楽しめるのは『七瀬ふたたび』。
テレパスという超能力をもって生まれたものの葛藤などを含め、一番生き生き描かれています。
『家族八景』は各話で登場する家族の方にスポットが当たっていますし、『エディプスの恋人』ではある意味駒のようになってしまいますからね。
あとがき
個人的には本書は合わなかった。二百ページちょっとの作品だけれど、小さい文字がびっしり詰まっているのもあって、体感ではもっと長く感じましたね。


コメント