
感想 ★★★★☆
七瀬シリーズの二作目。前作『家族八景』とは大きくテイストが異なり、今回は超能力者たちの戦いを描いた物語になっています。
七瀬以外にも様々な能力を持つ者たちが登場するエンタメ作品ですね。
よくあるタイプと言えばよくあるタイプですが、シンプルに楽しめました。
※記事の最後にネタバレがありますので、未読の方はご注意下さい。
あらすじ
テレパスの能力を持つ火田七瀬は、家政婦を辞めホステスをしながら生活していた。そんな中、自分と同じように超能力を持つ者たちと出会い、行動を共にするようになる。
能力者とバレないようにひっそりと暮らすことを望む彼女たちだったが、様々なピンチに見舞われる。
そしてついに能力者を抹殺せんと試む集団が現れ、命の危険にさらされるはめに。
七瀬たちは己の存亡をかけ、否応なく戦いを強いられるのだった。
感想
今回も何年かぶりの再読です。超能力者バトルというのは覚えていましたが、それ以外は綺麗に忘れており、ほぼ初読に近いような感じ。
改めて思いましたが『家族八景』とは大きく様変わりしています。
『家族八景』は家族間の問題がテーマで七瀬はナビゲーターに近い役割でした。でも本作は彼女がメイン。
超能力者ゆえずっと孤独を感じ続けてきた彼女が、同じ悩みを持つ同胞たちと出会い、初めて本当の意味での仲間を得ます。
そういう悩みも描いているものの、物語的にはエンタメ作品。『家族八景』のような人間の暗部に焦点を当てたものとは意図が異なります。
映画や漫画など、数々の超能力ものと同じ意味で楽しめます。
大事故の予知、ダイヤモンドの盗難、殺人事件などのピンチを、超能力を駆使して乗り切ります。
これらのエピソードが前半で描かれ、後半は謎の集団との戦いが始まる。
その様子はこの手の超能力者ものの王道ともいえますね。漫画的というかハリウッド映画的というか、そういうエンタメ的な良さがあります。
どちらかというと前半部分の方が面白かったですかね。次はどんな能力者が登場するのだろうというわくわく感がありました。
七瀬と同じ能力のテレパス、それから予知能力者、テレキネシス、時間遡行者が登場します。
それぞれのキャラも立っていてよかった。
一番好きなキャラは時間遡行者の藤子。『時をかける少女』しかり、この能力の作品が好きなのもありますが、藤子自体のキャラが良かった。
そして予知能力者には親近感を覚えました。とても好感が持てるキャラ。
特に不満を感じる部分はないのですが、エロについては別になくてもよかったかなあという気がします。
へニーデ姫の章であそこまでページを割く必要があったのか疑問に思います。
もしかしたら読者サービスかも知れませんが、個人的にはない方がよかった。
直接的な描写はないけれど、この作品にそういうシーンは求められてない気がする。
結末については個人的には好きでした。この終わり方で良かったと思う。それについてはネタバレにて。
あとがき
超能力系の話が好きな人におすすめです。
1975年に発表された作品ですが、今読んでも古さは感じません。
エンタメの王道になっているのと、仲間との絆など、そういう普遍的なものがテーマとなっているので楽しめますよ。
ネタバレ
結末はバッドエンドでしたね。半ばそうなるだろうと予想はしていましたが、やはりそうかという感じ。
でもまさか全滅するとは思わなかった。
少なくともノリオは生き残るだろうと思っていたので意外でした。
悲しませるためにただ死ぬのではなく、その死に意味があったのがよかった。
七瀬に危機を知らせるために戻ってきた藤子はもちろん、予知能力者の恒夫については、まるで謎解きを見せられたかのような納得感がありました。
七瀬に敵を見せるために、死ぬためにここに来た、という理由は印象的でした。
もちろん各キャラの死は悲しいですけどね。
最初はラストシーンや仲間の死があっさりしすぎな気もしたのですが、終わって見ればこれでよかった。
この手の作品ではだいたい仲間の死を派手に盛り上げたりしますが、こういう終わりの方が無常観が出ていいかもと思いました。
いいバッドエンドというのも変な言い方ですが、物語の締め方として収まりがいい気がしました。


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