
感想 ★★★★★
言わすと知れたSF小説界の巨匠・筒井康隆が書いたSFファンタジー。一つの場所に安住することなく、旅をし続けることを選んだ男の物語。この小説は大好きですね。ページ数は少ないのに、大長編を読んだ後のような満足感があります。
架空の世界を舞台にしたSFファンタジー作品
主人公のラゴスが世界のあちこちを旅をする物語で、ある場所では奴隷になり、またある場所では王様になったりする。
裕福な家庭に生まれたにもかかわらず、旅に魅せられた男ラゴス。 なんとなく仏教の始祖シャカに似たものを感じた。
ラゴスは三十を過ぎてから、人類の先祖が残したとされる書物を読むため旅に出る。
無事その地に辿り着いたラゴスは、書物を読むうちにどんどん失われた知識を吸収し、村人たちから王様として讃えられる。
ラゴスの知識により村が発展していくさまは、読んでいて楽しかったです。
ラゴスの生き様がかっこいい
王様となったラゴスは、その王国で暮らすこともできたのに、さらに旅を続けることを選ぶ。生まれ故郷に戻って家族と友人に囲まれても、再び旅に出る。
行く先々で女性と親密な関係になって引きとめられても、彼女たちを捨ててしまう。
安住することなく何かを求め行動し続けるラゴスの姿に、ヘミングウェイ的な力強さとかっこよさを感じました。
ページ数は少ないけれど、この小説はラゴスの半生を描いた一大叙事詩です。
ラゴス最後の旅は六十八歳になった時。その目的は三十年前に恋をした少女デーデにもう一度会うため。
デーデがいるとされるのは生物の住めない極寒の地。確かな情報があるわけではない。不確かな情報をもとに、ラゴスは己の死を覚悟して旅に出る。
冒険や旅が好きな人は、この小説に魅了されるでしょう。読んでいる間、まるでその地を旅しているような気分になります。現実逃避して物語の世界に浸りたい時に最適な一冊。


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