名作SF小説『時をかける少女』筒井康隆 あらすじと感想

 

感想 ★★★★☆

もはや古典ともいえる超有名作品。何度もドラマ化され、アニメや漫画にもなっているので
知らない人はいないレベルですね。

でも原作を未読の方は意外と多いのではないでしょうか。
この作品、実は長編ではなく100ページほどの中編なんですよね。

『時をかける少女』はもちろん、同時収録の『悪夢の真相』と『果てしなき多元宇宙』も面白いのでおすすめ。

なんなら『時をかける少女』よりも好きかもしれません。

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あらすじ

『時をかける少女』

理科室で不審者を発見した和子は、捕まえようとするもその人物は忽然と姿を消す。不思議に思っていると割れた試験管を発見し、そこからはラベンダーの香りが。

その匂いを嗅いだことがきっかけで、和子の周りで次々と異常事態が起き、自分がタイムスリップしていることに気付くのだった。

 

『悪夢の真相』

昌子は友達である文一のいたずらによって、般若のお面が異常に怖いことに気付く。なぜこんなに怖いのか。その原因を探る内、幼少期の記憶が関係しているとわかり、生まれ育った村を訪れる。そしてついに恐怖の真相が明らかになるのだった。

 

『果てしなき多元宇宙』

学校からの帰り道、暢子と史郎は不良たちに絡まれてしまう。史郎は何もやりかえさずやられるがままで、暢子はそのことに不満を抱いていた。その日の夜、暢子は急激な眩暈に襲われる。そして次の瞬間から世界が微妙に変化していた。

決定機だったのは史郎だ。翌日またもや不良絡まれた際に、史郎は彼らをボコボコにしてしまう。暢子は自分が平行世界に迷い込んだことを悟った。それからもこの現象はたびたび起きて、今とは微妙に異なる平行世界を移動し続けるのだった。

 

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感想

例によって今回も何年かぶりの再読です。『時かけ』の内容はさすがに覚えていましたが、細かい点で忘れていたところがいろいろあって、また新たな感想を抱きました。

『悪夢の真相』と『果てしなき多元宇宙』に関してはまったく覚えてなくて、そのことに驚きました。

むしろ『時かけ』よりも楽しく読めたのに、当時の僕はそう思っていなかったということでしょうか。わからないものです。

でもこれが時間を置いて再読する楽しみでもありますね。読む時の年齢や自分の置かれた状況によって感想は変わってきますもんね。

さて『時をかける少女』ですが、古さを感じるのは否めないです。ストーリーは普遍的で今でも楽しめる。けれど主要キャラの名前や言葉遣い、しゃべり方には時代を感じます。

セリフに関してはわざとこうしているのでしょうか。わざとらしいというか、ぎこちないというか、何だか不自然さを感じる部分がありました。リアルな友達同士の会話という感じがしない。

そういうのはあるものの、根幹であるストーリーは色あせないですね。何年経っても映像化される
理由がわかります。SFの枠を飛び越えて青春小説の金字塔ですね。

僕は実写版はたぶん見たことないか見ていたとしても覚えてないんですが、細田守監督のアニメ版はよく覚えています。

あれは良い映画でした。映像化して大成功だったと思う。

『悪夢の真相』は自身のトラウマを探っていく話。おそらく出版された当時はまだトラウマという言葉はなかったんじゃないでしょうか。

今では一般的に使われますが、いつから日本でこの言葉が広まったんだろう?

まあそれは置いといて、本作はとても好きなタイプの作品でした。物語の展開がミステリテイストでミステリ好きの僕としては終始楽しめました。

なぜこんなに怖いのか、という謎が提示され、それを友人と一緒に解決へ向け調査する。こういう話は好きだし、青春ものとしてもよかったです。

『果てしなき多元宇宙』は平行世界がテーマで30ページはどの短い話。途中からギャグっぽくなっていき、単純にユニークで好きです。

『時かけ』のところで言ったような古さや会話のぎこちなさはどの話も共通。そして好感の持てる空気感も共通しています。

sf好きのみならず、学園ものが好きな人にも打って付けの短編集です。

 
 

あとがき

誰にでもおすすめしやすい短編集。筒井康隆といえばエロやグロもあったりしますが、本書はとても爽やかです。

それにしても、こういう正反対なものまで書けてしまうのは凄いですね。ほんとに幅が広い作家さんです。

 

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