水族館ミステリ「水の迷宮」石持浅海 


感想 ★★★☆☆

三人前に不慮の死を遂げた水族館職員の命日に事件が起きる。展示生物への攻撃を予告する脅迫メールが届き、実際その通りに被害を受ける。
警察へ通報せずに自衛策を講じる職員たち。しかしついに殺人事件が起きてしまう。
はたして犯人の狙いはなんなのか、職員たちはあれこれと推論を重ねる。
そして、最後には驚くべき展開をむかえる。

水族館を舞台にした長編ミステリで著者お得意のクローズドサークル。
終盤までは面白く読むことができた。水族館の裏側が丁寧に描かれていたし、三年前の事件との関連づけもよかった。
今回は珍しく犯人の動機にも頷くことができた。 

問題なのは終盤からの展開。僕はそのありえない展開に唖然としてしまった。これはもう批判されるのを承知でわざとやっているとしか思えない。
文庫の裏表紙には感動の結末と書いてあるがそんなの大嘘である。

確かに合理性を考えるとこういう結末になるだろう。しかし、それでは小説として成立しない。上手くいかなくて、葛藤があって、それでも正しいことをするから、人は感動するのではないのか。
こんな都合のいい結末を見せられたのでは、しらけてしまうどころか笑ってしまう。

途中までは面白かったのに最後の最後でぶち壊しにしている。石持浅海の作品にはどこか一般的な価値観とは異なるところがある。
今回もその持ち味を出すためにあえてこういう結末にしたのだろう。もし、これが本当に正しいと思ってやったのなら、作家としては致命的にピントがずれていると思う。

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