『悪の教典』貴志祐介 サイコパスを描いたエンタメホラー小説 

不気味な鳥のドクロ

感想 ★★★★☆

第一回山田風太郎賞を受賞した作品。映画化もされてその過激な内容が話題となりました。

本作は人の心を持たない教師が主人公のサイコホラー。何のためらいもなく次々と人を殺していくサイコパスの恐ろしさを、存分に堪能できるストーリーになっています。

エンタメホラーとして申し分ない面白さでした。途中からはノンストップでどんどん読み進めてしまいます。

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感想

主人公の蓮実聖司はイケメンで生徒からの信頼も篤い、まさに非の打ちどころのない完璧な教師。生徒からはハスミンの愛称で親しまれ、教師たちとの関係も良好。

物語の序盤から中盤にかけては、そんな彼が学校内で起こる様々な問題を解決していきます。

カンニングやいじめなどを解決しながらも彼は、自分の都合のいいように学校を操っていき、そのために平気で人を殺したりする。

合間に蓮実の過去のエピソードがあって、 彼が他人に共感することができない人間と明らかになります。物事を判断する基準となるのは、自分にとってプラスになるかどうかだけ。

人間らしい感情に左右されることは一切ない。生まれながらのサイコパスなのだ。

蓮実に疑惑を持つ人間が現れても、ことごとく排除されてしまいます。頭が良くて運動能力も優れているため、太刀打ちできる人間がいないのである。

犯罪者として隙がない蓮実。彼が負ける姿は想像できない。まさか、始めから終りまで彼が勝ち続けるのか? それでは娯楽作品としてつまらなくはないか? この小説はいったいどうやって終わるんだろう? と疑問に思いつつ迎えたクライマックス。

そこで怒涛の展開が待っていました。

文化祭の準備のために生徒たちが学校に集まっていた夜、些細なことで犯罪が露呈しそうになった蓮実は、前代未聞の行動に出る。

今現在、学校にいる生徒全員を抹殺しようというのだ。

最大の見せ場であるこのシーンを、ゲーム的だという理由で批判している人がいるようですが、人間の心を持たない彼にとってはゲームのようなものなので、そうなるのは当たり前と言えます。

蓮実が尋常じゃないことをさんざん煽ってきたので、このくらいしないとエンタメ作品として収拾がつきません。派手さのあるラストでよかったと思います。

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あとがき

蓮実の犯罪がバレるラストについて、僕は全然あの事に気付いてませんでした。なので意外性を感じることが出来たわけですけど、世の中の感想を見てみると、結構気付いた人多いみたいですね。

言われてみれば確かに、天才サイコパスの蓮実が見落としてるのは迂闊すぎる気がしますが、僕は特に気になりませんでした。

純粋な娯楽作品として楽しかったです。ページ数は多いですが、体感はあっという間。エンタメ作品として良作の証拠ですね。

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