感想 ★★★★★
貴志祐介の傑作ホラー小説。見知らぬ場所に連れてこられた登場人物たちが、生き残りをかけて戦うサバイバル小説。
先が気になるストーリー展開で文章も読みやすいので一気に読めてしまう。エンタメ小説として申し分ない作品。
あらすじ
主人公の藤木は岩だらけの火星のような場所で目を覚ます。なぜこんな場所にいるのかわからず戸惑う藤木の傍らにゲーム機が落ちていた。
そのゲーム機の指示に従い行動する藤木。次期に同じような状況の人間たちと出会い、護身用のアイテムや食料などが各地にあることがわかり、彼らはチームを組んで別々に行動する。
ゲームの全貌が明らかになるにつれ、彼らは対立するようになる。そしてついには生き残りをかけた殺し合いへと発展するのだった。
感想
貴志祐介はホラー小説大賞を受賞した『黒い家』で一躍有名となりました。『黒い家』は生命保険会社に勤めていた著者の経験が大いに生かされおり、人間の怖さを描いた非常にリアリティーのあるホラー。
寡作な作家ですが、その分ひとつひとつのクオリティーが高く、数々のヒット作を生み出しています。『青の炎』、『新世界より』、『悪の経典』などは映像化され話題になりましたね。
さて、本書はいわゆるデスゲームものです。本書を初めて読んだのは結構前で、僕がデスゲームに触れたのは、もしかするとこの『クリムゾンの迷宮』が最初かもしれない。
夢中で読み進めたのを良く覚えています。
デスゲームと言えば閉ざされた空間で殺し合うのが一般的。『saw』や『インシテミル』もそうですね。本作も閉ざされた空間であるものの、広大な場所を舞台としているため、スケールが大きくサバイバル感が増しています。
なのでサバイバル小説が好きな方にもおすすめです。
舞台となっているのはオーストラリアにあるバングル・バングル。読んだ当時はこの場所を知らなくて、こんな場所もあるんだあと、驚いたものです。
小説を読んでいる時は火星か何かとしか思えなかったので、現実の地球にこんな不思議なところがあるなんて信じられませんでした。
序盤でデスゲームの設定に興味を引かれ、一気に引き込まれました。中盤から後半にかけては怒涛の展開が待っているので、終始あきさせない。
エンタメ作品のお手本のような構成になっています。最後まで中だるみせず読者の興味を引っ張るのもさすが。
物語は主人公の藤木の視点で書かれており、彼が再三ピンチに晒されるので、読んでいるこちらも手に汗握ることは必須。
あとがき
今はもう小説に限らず、漫画や映画でもデスゲームものは溢れているので、今の若い人が本作を読んでどう感じるのか気になるところですね。
ありがちな話と感じるのでしょうか。今読んでも全然楽しめると思いますけどね。個人的にはデスゲームものの傑作と思っています。
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