世にも奇妙な遺体『ネジ式ザゼツキー』島田荘司 あらすじと感想

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感想 ★★★★☆
記憶喪失の男が描いた童話と、不可解な死体を巡る本格ミステリ。最大の特徴は死体の異常性です。これほど奇妙な状態はなかなかお目にかかれません。
本格ミステリだと不可解な死体はたびたび登場しますが、その中でもトップクラスに特殊。それが論理的に解決され、謎解きとしては満足です。
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あらすじ

記憶喪失のエゴンは自分の帰るべき場所を探していた。その答えを求めて脳科学者の御手洗潔の元を訪れる。
話を聞いた御手洗は、彼が書いた『タンジール蜜柑共和国への帰還』というファンタジー小説に注目する。
巨大な蜜柑の樹の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精などが登場する、創造性あふれる物語だ。
小説を読んだ御手洗は、これは創作ではなくエゴンが実際に体験した話だと言う。俄には信じられないが、調べて行く内に実在するある国と判明する。

さらには、その国で起きた前代未聞の事件との繋がりも明らかになる。はたしてその事件の真相とは、エゴンはいったい何者なのか――。

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感想

『占星術殺人事件』で知られる御手洗清シリーズの一作。結構古い作品なのですが、読むのは今回が初めて。島田荘司の作品自体が久しぶりで、あれ、こんな感じだったっけ? と若干の戸惑いを覚えました。
宗教や文化に関する蘊蓄というか衒学というか、それがやけに多く感じました。いくら御手洗潔が奇天烈なキャラとはいえ、だんだん著者に直接言われているような気がしてきます。
それらの話がどれだけ興味深かったとしても、長々と語られるため冗長に感じてしまいます。

例えば、その時代が舞台で時代考証のためとか、物語の根幹に関わるとかならわかるんですけどね。その話をしたくて強引に関連付けたんじゃないかと、邪推したくなります(笑)。
それと結末に関してですが、今一つすっきりしませんでした(謎解きではなくストーリーに関して)。

この話はある種ラブストーリーでもあって、基本的にはハッピーエンドなのですが、ちょっとモヤッとしちゃいます。
最後になって、ある女性が実はこういうことをしてましたと言われると、「えぇ……」となってしまう。

動機とかいろいろ考えると、こうせざるを得なかったのかもしれませんが、何か違うやり方はなかったのかなあと。
これは不満というわけじゃないですが、モヤッとはしますね。ハッピーエンドの話として、素直に感動することはなかったです。

ミステリとして

謎解きとしては何の不満もありません。最初に言った死体に関してですが、これは首と胴体が切断されていました。ここまでなら、本格ミステリではお馴染みとも言えます。
異常なのは、首と胴体にそれぞれネジのジョイントがはめ込まれ、固定されていた点。あまりにも異常過ぎて、僕には理由なんてまったく思い付きませんでした。
ホラー小説だと、狂人による芸術性の表現、みたいな理由になりそうです。そのくらい意味不明。だから僕もその手の理由に落ち着くのかなと、漠然と思っておりました。
なので真相には唸らされました。ちゃんと納得のいく理由だったのです。説明された途端、異常に見えていたものが、常識的に見えて、目から鱗が落ちるようでした。

こういう予想も付かない発想力が、島田荘司の凄いところだと思います。

あとがき

ファンタジーが現実に繋がる構成、事件の異常性と謎解き。ミステリ部分に関してはとても面白かったです。ただ少々癖が強い。

会話だけで続く部分があるかと思えば、一人語りで長々と説明する部分もあります。もちろん意図してやってるんでしょうが、これを好ましく思うかどうかで評価も変わってくるかもしれません。

謎解きに関しては掛け値なしに面白いので、ミステリ好きは読んで損ないです。グロが苦手な人は注意が必要ですかね。

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