驚きのトリック 『螢』麻耶雄嵩 ネタバレあり感想

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感想 ★★★★☆
クローズドサークルものの本格ミステリ。山奥の屋敷に集まったメンバーが、自然災害で閉じ込められ、殺人事件が発生します。
そんな王道の設定を使い、麻耶雄嵩らしさが存分に発揮されていました。トリックは面白く基本的には満足。
ただ、ハチャメチャな部分(例えばエピソードなど)もあり、絶賛するのは躊躇ってしまう。それが麻耶雄嵩の良さと言えばその通りですが。
麻耶作品を既読かどうかでも感想は変わりそうです。
※本作はわりと古い作品だし、ある点について触れて起きたいので、後半でネタバレしています。ネタバレ部分は文字を反転しています。
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あらすじ

オカルトスポット巡りをしている大学サークルのメンバー六人が、人里離れた山間部にある屋敷を訪れる。

ファイアフライ館と名付けられたその屋敷は、サークルOBの資産家が所有しており、メンバーとは知己の間柄だ。

このファイアフライ館、実は曰く付きの物件で、十年前に六人もの死者を出した事件現場なのだった。所有者のOBは変わり者で、その事件に深く魅せられていた。
事件への入れ込みようは尋常じゃなく、惨劇の起きた十年前の状態を充実に再現するほどの徹底ぶり。
そんな曰く付きの館での一時を、オカルト好きのメンバーたちは楽しんでいたのだが、十年前を再現するかのような殺人事件が起きてしまう。
メンバーたちは大いに戸惑う。実は半年前にもメンバーの一人が、世間を騒がせている連続殺人鬼の犠牲者になっていたのだ。
なぜ自分たちばかりこんな目に遭うのか、オカルト巡りをしているせいで呪われてしまったのか。
不安に苛まれながらも、彼らは犯人捜しに乗り出すのだった。

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感想

クローズドサークルが好きな人は楽しめると思います。登場人物は大学サークルのメンバーで、青春ミステリでもあります。舞台となる屋敷もそれっぽさがあって良かった。
資産家が所有する山奥の建物といえば、やはり雰囲気のある独特なものを期待してしまう。こと本格ミステリにおいては特に。
少なくとも僕はその点を期待するのですが、そういう意味では満足です。相当に特徴的な建物。僕と同じように、館の造りとか雰囲気に興味がある人は、読んで損はないです。
ファイアフライ館という名の通り螢がテーマとなっていて、全面黒塗り、そして世界中の螢を集めた展示室もあります。十年前の惨劇を再現したこだわり、そしてその他にもいろいろ秘密があって面白かったです。

トリックについて

麻耶雄嵩らしさが発揮されたトリックでした。真相を明かされても、僕は最初よく意味がわかりませんでした。

しばらく考えて意図を理解し、それからようやく、なるほどそういうことかと、感心させられた感じ。僕は麻耶作品で何度かこういう経験があります。

気持ち良くすぐ騙されるのではなく、時間差で徐々に驚きが込み上げてくる。そういう意味でもやっぱり独特な作家だなあと、再認識させられました。

本作のトリックもわかってしまえば、ちゃんと納得できます。論理に矛盾はありません。こういうアレンジ方法もあるのかと、その技巧に感心させられました。
ネタバレ

↓ここから文字を反転

最後に土砂崩れが起きて生き残ったのは一人だけと、エピローグに書かれています。

この生き残りが誰だったのか気になるところですが、推理によって一人に絞るのは
無理そうです。

 

ストレートに考えれば、犯人の長崎直弥でしょう。十年前の事件で生き残ったのは、犯人である加賀螢司。彼は螢のメロディーで狂って殺人を犯しています。

 

長崎の方も犯人で、しかも螢のメロディーに魅せられたと、最後に触れられています。

そう考えると、やはり長崎と考えるのが妥当な気がします。

 

他に気になるのは、諫早がなぜ〝ジョージ〟の共犯者になったか。ストーリー上これはとても重要な点だと思いますが、まったく言及されていません。

せめて示唆するくらいはして欲しかったですね。心の闇を見たくないでスルーするのは、さすがに不親切だと感じました。

 

もっというなら〝ジョージ〟という名前も気になります。読み始めて僕はまずこれが気になりました。通常ならそれっぽい印象的な名前をつけるものだと思います。

 

なぜジョージなんて面白味もない普通の名前だったのか。結局それもわからず終いでした。特に意味はなかったようですね。

ここまで

あとがき

トリックが面白かったので感想は星四にしようと思ったのですが、三に下げました。その主な理由は、エピローグが不要に感じたのが大きいですね。
こういうことをやるのが著者の特徴だとしても、本作に関してはあまり面白味が
ないように思います。
一つの小説としてみると、無茶苦茶な終わらせ方なわけだし、少なくともそうするほどの面白味はなかったかと。
それとネタバレに書いたことなんかも鑑みると、下げざるを得ませんでした。
麻耶作品がどういうものか知らず、初見で本作を読んだら、何だこれ? となる可能性もある気がしますね。

読み終わった後に誰かと語りたくなる作品。僕は楽しめましたよ。

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