
感想 ★★★☆☆
脳性麻痺の少年を探偵役にした短編集。刑事から事件の話をきいて推理する安楽椅子探偵もの。衝撃を受けるような話はなかったものの、面白いと思う点はところどころありました。
トリックに特筆すべき点はないので、ミステリとしては並ですかね。短編集だし、ちょっと空いた時間に読むには良いですね。
あらすじ
『多すぎる証人』
団地の一室で男が刺殺される。犯人とおぼしき人物が団地から逃げるところを、同じ団地に住む八人の主婦が目撃していた。しかし、それぞれが主張する犯人の特徴はてんでバラバラで、一貫性がまるでない。刑事から話を聞いた少年は、彼女たちの証言から犯人を推理する。
『宙を飛ぶ死』
同窓会から忽然と姿を消した一人の男。その男の遺体が遠く離れた湖で発見される。男がいなくなった場面を目撃した者は誰もいない。男はなぜそんな場所で死んでいたのか。
『出口のない街』
指名手配中のヤクザを尾行していた警察官二人は、ある街でその男を見失ってしまう。次に発見された時、男は変わり果てた姿になっていた。男が殺された時、街は警察の監視下にあり、巨大な密室状態になっていた。犯人はいかにしてこの密室をくぐり抜け殺人を犯したのか。
『見えない白い手』
資産家の未亡人は身の危険を感じ警察に相談する。話を聞いてみると、確かに命を狙われているようである。警察は犯人と思われる男に厳重な監視をつけ、未亡人には注意を喚起したが、その甲斐むなしく殺害されてしまう。現場の状況や関係者の証言を元に、犯人を割り出そうとするが、容疑者は二転三転する。
『完全な不在』
かつて俳優として名を響かせた人物の一軒家で、変死体が発見される。現場の状況を見る限り、俳優の仕業としか思えなかった。彼は必死にアリバイを主張するが、警察は信じていなかった。だが、その証言を裏付ける人物が現われ……。
感想
物語の形式は本格ミステリそのもの。刑事の真名部が脳性麻痺の少年信一に話を聞かせ、その話を聞いただけで信一は事件の真相を看破する。
信一の論理展開の仕方に無理なところはない。理にかなった思考方法で事件を解決して見せます。
主要キャラクターである真名部と信一、それに彼の母親である咲子には愛嬌があるので、彼らのやり取りを読むのは楽しい。彼らが織りなす雰囲気はとても良いです。
それぞれの話で起きる事件にあまり興味をそそられないのと、トリックが凡庸ところが残念ですね。
ミステリとしてこれは凄いと思えるものはなかったです。でも各話で登場する人物たちの会話や性格などは魅力的で、コメディ的な楽しさは感じられます。
コージーミステリが好きな人におすすめですね。


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