刀城言耶シリーズ最新作! 『忌名の如き贄るもの』三津田信三 あらすじと感想 ネタバレなし

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感想 ★★★★☆

心待ちにしていた刀城言耶シリーズの最新作。さて今回はどんなお話なのか。期待を込めて読み始めました。

これまでの長編作と比べると大人しい印象。異常な事件が次々と巻き起こるような派手さはないです。主となる事件は一つで、それに付随してもう一つ事件が起きるといった具合。
なので、物語の雰囲気は楽しめるものの、ミステリとしては今一つかなと思っていました。
しかし最後にその印象が大きく変わりました。まさかそう来るとは思ってもみませんでした。さすが刀城言耶シリーズ。期待を裏切らない。
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あらすじ

怪奇作家の刀城言耶は、ひょんなことから大学時代の先輩の結婚挨拶に同行することになった。
相手女性の生まれは地方の名家で、その村では〝忌名の儀礼〟と呼ばれる他に類を見ない特異な儀式を行っていた。
忌名の書かれたお札を持って一人で森へ入り、その奥にある滝つぼへお札を投げ入る。その道中、何があっても決して振り返ってはならない。もし振り返ると、恐ろしい禍が……。
そんな儀式の最中に殺人事件が発生する。まるで、その地に伝わる怪異を模したような殺害方法だった。
いったい誰が何のために、なぜ神聖な儀式の最中に殺害する必要があったのか?

地元警察と共に捜査を進めた刀城言耶は、閉鎖的な村に隠された秘密、儀式の意味、そして驚くべき事件の真相を明らかにするのだった。

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感想

読み易さという意味では、シリーズ中、最も読み易いです。刀城言耶シリーズを未読の方に一冊勧めるなら、本書が一番最適でしょう。

他の作品を読んで合わなかった人も、この作品ならまた違った感想を持つかも知れません。

初期作品に見られるような、複雑怪奇な事件の連続ではありません。冗長な部分もなくて、ページ数も400ページほどと、このシリーズとしては少な目。

事件が一つで分かり易いし、それだけに真相の衝撃度も大きい。万人受けし易く、映像化も可能。つまり、そういうタイプの作品ということです。

事件について

話のメインは儀式の最中に起きる殺人事件。そこまで異常な状況でも、不可能状況でもありません。

犯行可能な人間は多くいるけれど、する理由がない。ホワイダニットが主な焦点となります。
なので、随分大人しい作品だなあと感じました。このシリーズの長編と言えば、これでもかってくらい複雑だったり、異常な状況だったりしますからね。
解決編では、恒例の様々な推理が披露されます。普段ならその中に、これが真相で良いんじゃないか? と思える面白い説があるのですが、今回はどれも今一つに感じました。
これというのがないままページ数がどんどん減っていき、まさかこのまま終わるのか、今作は微妙だなあと思っていたところで、最後にやられました。
まさかこんな動機とは予想だにしなかった。異常な動機のミステリは多々ありますが、これもかなりのもの。ホワイダニットが好きな方は、読んで損はないです。

あとがき

民族学としては、葬送儀礼に関して詳しく書かれています。かつては日本でも土葬の文化があって、その方法とか葬儀についての仕来りなどに触れられています。
忌名の儀式には怪奇性があって、このシリーズの特徴であるミステリとホラーの融合を果たしています。
なので、これまで通りの雰囲気を楽しめます。その点は心配入りません。
久しぶりの刀城言耶シリーズ、堪能しました。おすすめです。

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