奇妙な味の短編集 『冷蔵庫より愛を込めて』阿刀田高

refrigerator

感想 ★★★★☆
短編小説の名手として知られる阿刀田高の処女短編集です。いわゆる〝奇妙な味〟と呼ばれる話が多いので、そういうのを探している人におすすめ。18作品も収録されているので、気に入る作品がきっと
見つかるはずです。
中でも僕が特に面白いと思ったのは、『冷蔵庫より愛を込めて』、『趣味を持つ女』、『歌を忘れない鸚鵡』、『ギャンブル狂夫人』、『幽霊面会術』の五つ。これら各短編の内容を簡単に紹介したいと思います。
スポンサーリンク

あらすじと感想

『冷蔵庫より愛を込めて』

まずは表題作の『冷蔵庫より愛を込めてから』。何と言ってもタイトルがとてもキャッチーですよね。いったいどういう話なんだろうと読んでみたくなります。
内容の方は事業に失敗して精神を病んでしまった男の話。何ヶ月も入院していた彼が退院してみると、妻のおかげで借金は返済されており、日々の生活費も稼いるような状態で、男は妻に感謝しつつ穏やかな生活を送っていた。
そんな彼に友人がビジネスの話を持ちかける。妻に申し訳ない気持ちがあったし、失敗したままでは終われないという思いがあり、男は友人と一緒に新たなビジネスを始める決意をする。ビジネスの詳細を聞いて、男は絶対に成功すると確信していたのだ。はたしてその結果は――
という感じのお話です。ページ数は20ページあるかないかくらいで、短編というより掌編ですね。手軽に読めて、尚且つ、オチの切れ味が抜群なのでおすすめです。

『趣味を持つ女』

こちらはミステリーテイストの作品です。関係ない人の葬儀にたびたび現れる謎の女。彼女の目的はいったい何なのか、というお話。
ミスリードからのオチに意外性があるし、理由にも納得もできます。この短編はミステリ好きにおすすめですね。

『歌を忘れない鸚鵡』

旅行中に人妻と関係を持って仕舞った主人公。その関係は夏の間だけで、それ以降は一切連絡をとっていない。主人公は一夏の思い出として胸の奥に仕舞っていたのだが、ある日、予想外の事実が判明する。
この作品は読み終わった後、何とも言えない気持ちになります。切ないというか、やるせないというか、過ちを犯したのは事実だとしても、この結末は辛いですね。

『ギャンブル狂夫人』

妻との旅行を楽しんでいた主人公は、旅行中に偶然知り合った夫人からギャンブルを持ちかけられる。主人公はギャンブルが大好きだったが、妻は毛嫌いしていた。それは相手も同様だった。

そこで主人公と夫人は、お互いのパートーナーには内緒で勝負を始める。主人公は絶対の自信をもっていたのだが、夫人は予想以上の能力の持ち主で――

とんでもない自体に発展するかと思いきや、ほのぼのする結末で面白かったです。上には上がいるものだと、微笑ましくなりました。

『幽霊面会術』

物語の舞台は紀元前の地中海。主人公は当代一の知識者。そんな彼に対し女王が無理難題をふっかける。亡くなった王子の思い人を甦らせ、王子と再会させろというのだ。
これには主人公も頭を抱える。今まで様々な要求に応えてきたが、こればっかりはどうにもできない。しかし、断れば命はない。女王は暴君で気に入らないことがあると、すぐに処刑してしまうのだ。悩んだ末に主人公はある方法を思い付き実行に移す。
『冷蔵庫より愛を込めて』と違って、こちらはタイトルがあまり良くないですね。というのも、この話は童話や昔話のような読み味なのです。幽霊と面会する話ではありますが、イメージと違うので、もったいない気がします。
こういう話は大好きですね。ファンタジーや童話が好きな人におすすめ。
スポンサーリンク

最後に

短編の名手と呼ばれるだけあって、様々なテイストの話が楽しめます。ただ、古い本なので
なかなか手に入り難いのが難点ですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました