『忌録: document X』阿澄思惟 三津田信三の別名? モキュメンタリーホラー

感想 ★★★☆☆

四つの話が収められたホラー短編集。キンドルのみで販売されている作品です。電子書籍を検索していて偶然見つけました。まったく無名の人なのに、評価数がやたら多くて気になって読んでみました。

どうやら三津田信三の別名義ではないか、との噂があるようです。真偽のほどは不明ですが、かなり実験的な作品なので別名にしたとしても納得できます。

本書は考察好きの人におすすめ。間違いなく意図的に考察し甲斐のある書き方をしています。反対に考察なんて面倒という方はモヤッとするでしょうね。どの話も白黒はっきりする話にはなっていません。

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あらすじ

『みさき』

6歳の女の子・みさきちゃんが家族の前から煙のようにいなくなった。警察が必死で捜索するも発見できず、神隠しとの噂が立つ。憔悴する両親の元へ霊能者が現れ、みさきちゃんの行方を探すというのだが――。この事件の一連の流れを綴ったルポルタージュ。

 

『光子菩薩』

見たら死ぬお札を巡る話。様々な分野の専門家を集め研究を進め、原理らしきものは分かったものの、根本的な解決策は見つけられない。多くの犠牲者を出し、専門家の間でも軋轢が生まれるのだった。

 

『忌避(仮)』

怪談雑誌の記者が沖縄の幽霊屋敷について調査する。その家に住む一家は怪奇現象に悩まされており、記者は霊媒者のお祓いに立ち合う。そしてお祓いが進むに連れ、とんでもない事態に発展するのだった。その家では過去に何人も亡くなっており、決して手を出してはいけない物件だった。

 

『綾のーと。』

あるマンションに引っ越した女性の心霊体験談。引っ越してから心霊現象に悩まされるまでの過程が、ブログを通して語られる。友達や家族にも相談し引っ越しを決意。この問題でトラブっていた不動産屋に幽霊の存在を認めさせるため、引っ越し前に部屋にカメラを設置し長時間撮影を試みる。はたしてそこに映っていたものとは――。

 

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感想

四つの話が収められたホラー短編集。非常に実験的な作品で、通常の小説の形式で書かれていません。怪談ルポのような話もあれば、ブログ形式で書かれた横書きの話もあり、画像も豊富に収録されています。

『みさき』は未解決事件を追うルポ風、『光子菩薩』は当事者による書簡、『忌避(仮)』はパソコンに残されたドキュメントとメール、『綾のーと。』はブログ画面。

こんな風に全部独特な形で書かれています。結局どういうことなのか曖昧なまま終わっている話も多く、少しモヤモヤします。そうやってリアリティを出すのが意図で、実際不気味さも出ていました。

なので、考察好きの人におすすめ。実際のネット上でも、未解決事件や心霊スポットなどの考察がされてますよね。本書でも様々な考察が可能です。togetterというツイッターのまとめサイトでも、本書に関する考察が色々されているので、興味のある方は楽しめると思います。

感想についてですが、何と答えていいか難しい。怖いかと言われれば怖いけれど、面白いかと言われればどうだろう……。率直な感想を言うと、実験的な作品。これに尽きますね。

映画やドラマのモキュメンタリーホラーのような印象です。本書を読んでいると昔テレビ放送されていた『放送禁止』を思い出しました。

物語内のヒントから自分で真相を推測する。それからネットでの反応や考察を楽しむ。そこまででワンセットみたいな。意味が分かると怖い話も、この手のタイプですね。

本書でもそういう楽しみ方ができる、というかそれを意図して書かれていると思います。

 

あとがき

僕は普通の小説と思って読み始めたので、面食らった部分もあります。電子書籍でしか出来ないやり方をしていてユニークでした。

『綾のーと。』のブログへのリンクが貼られていたり、綾が撮影した動画はYouTubeへアップされています。紙の本ではできない手法は面白いですね。

今だとプライム会員は無料で見られるし、そうじゃなくても安いので、興味を持った方は試しに読んでみるのもあり。

三津田信三の別名義かどうかは正直わからないです。話の中に津田信というキャラが登場し、これは三津田信三から〝三〟を取った形。それでちょっと繋がりを感じましたが、ただの偶然かもしれないし、ファンなのかもしれないので何とも言えません。

ただ三津田信三が書いたと言われても納得はできます

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