感想 ★★★☆☆
中禅寺敦子が活躍するシリーズの二作目。前作よりは百鬼夜行シリーズっぽさを感じられる作品でした。
飛び抜けた面白さはないながら、雰囲気は感じられます。事件の結末にも納得できて、ミステリとしても楽しめると思います。
あらすじ
雑誌記者の中禅寺敦子は、知り合いの探偵から宝石盗難事件についてのアドバイスを求められる。そんな折、事件の関係者と思われる死体が次々と発見される。
いずれの死体も山奥の川で溺死しており、尻をむき出しにされるという奇妙な共通点もあった。そのあまりの不可解さに、河童の仕業だと主張する者も出る始末。
しかし事件は思いも寄らない結末を迎える。
シリーズについて
河童についての蘊蓄があって、癖のあるキャラも登場し、事件の様相も複雑。なので本家シリーズっぽさはあります。
もちろん、本家と比べると全ての面においてマイルド。解決方法も探偵役が一気に真相を暴くわけではありません。
それでも入門というか、雰囲気に触れられる作品に仕上がっていると思います。
登場人物は前作に引き続き中禅寺敦子と呉美由紀。加えて、妖怪研究家の多々良勝五郎というキャラが登場します。
破天荒な彼がいることで、妖怪についての蘊蓄とコミカルさが加味されています。前作がちょっと淡泊だったので、良いアクセントになっていました。
多々良は本家シリーズにも登場するようです。妖怪や民族学に造形が深く、敦子が担当編集をしています。
その他にも、百鬼夜行シリーズに登場するキャラが何人かいるようです。僕は三作目までしか読んでないのでわかりませんが、全部読んでいる方はそういう意味でも楽しめるかもしれませんね。
感想
そんなキャラたちで綴られる物語ですが、テンポ良く話が進んでいくタイプではなかったです。最初の女学生たちが語り合うシーンは、さすがに長過ぎです。
各地の河童についての考察があるので、不要とまでは言いませんが、それだけで60ページ近く割かれています。
呉美由紀の他はモブキャラでこれ以降は登場しません。蘊蓄が売りの一つとはいえ、重要でないシーンがこれだけ長いと少々しんどい。
まだ何も始まってない状態ですからね。マイナスにしかならないと思う。
そういう導入だし序盤もあんまりだったので、今回も微妙に感じてました。しかし、中盤以降から徐々に面白くなっていった。
連続水死事件は不可解だし、宝石事件とどう繋がっていくのか興味を惹かれました。
物語が進むにつれ、いくつもの謎が一つに収斂し、真相にも納得できます。意外性もあったし、ラストを飾るに相応しい異様な光景でした。
あとがき
タイトルにちなんだ話になっていて、良作だと思います。
ただ、ところどころで政治的というか、思想的な記述があって、そういうのが悪目立ちしていたように感じました。
あと、冗長に感じる部分が多かったですね。


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