『川の深さは』 福井晴敏 

感想 ★★★☆☆

江戸川乱歩賞の最終選考に残った作品を刊行したもので、実質的には福井晴敏の処女作といえます。
そのせいか少々とんがった印象を受けました。 

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あらすじ

元刑事で現在は警備員の桃山は、自堕落な生活を送っていた。そんな彼の勤務先に傷だらけの若い男女が訪れる。

ヤクザに追われているらしい彼らを助けることによって、桃山は非日常の世界に巻き込まれていく。

 

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感想

国家の陰謀に迫った非常にスケールの大きな話でした。日本の暗部だけでなく、北朝鮮や米国も絡んできて国際アクション小説といった感じ。

ある新興宗教団体が起こした地下鉄爆破事件。それに纏わる陰謀を描いているのですが、地下鉄サリン事件を題材としているのがすぐにわかる。

社会を震撼させた実際の事件をもとにしている挑戦的な作品です。

ストーリーがよく作りこまれていて面白かったです。

マイナス点をあげるとすれば、登場人物の背景を語るシーンが長すぎました。

もう一人の主人公である保の設定も出来すぎています。

幼少の頃より専門的な訓練を受けていたというならまだわかりますが、十代も半ばを過ぎてからであれだけのことができるとは思えない。

二十歳くらいという設定だから、せいぜい三、四年しか訓練していないことになる。たったそれだけの期間で、あのスキルはちょっと非現実的ではないでしょうか。

それと主人公の桃山が世の中について語るシーンでは、時折著者の顔が浮かんできました。

登場人物である桃山の考えを聞いているというよりも、著者の論文を読んでいるような気分になった。

作品に著者の主観が入るのは当然としても、少々前面に出すぎていたように思います。

 

あとがき

以上、マイナスに感じる部分もあったのですが、ストーリーに不満はありません。スパイ系の話が好きな人はきっと楽しめるでしょう。おすすめです。

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