『水中眼鏡の女』逢坂剛

内容(「book」データベースより)

黒い水中眼鏡をかけた女が、精神科医の前にあらわれた。ある朝、突然目が開かなくなってしまったという。自宅で発生した火事によって夫を失ったことが原因かと思われたが―。治療が進むにつれ、驚愕の真実が浮かび上がっていく表題作ほか、難病の妻の介護人として雇われた女性が、歪んだ夫婦関係に巻き込まれていく「ペンテジレアの叫び」など。サイコサスペンスの傑作全三篇を収録。

感想 ★★★☆☆

精神疾患をテーマとした三作の中編が収録されています。

三作とも楽しんで読むことができました。中でも『ペンテジレアの叫び』が一番僕の好みに合った。展開はだいたい予想できるのですが、ストーリー性のある良作です。

『水中眼鏡の女』

ある事件をきっかけに、水中眼鏡をかけていないと生活ができなくなってしまった千春。医師は千春の治療を続けるうちにだんだん彼女に惹かれていく。

一方の小寺五郎は千春から旦那の浮気調査をしてほしいと頼まれる。千春にぞっこんの小寺は快く承諾して調査を開始する。

千春はなぜ水中眼鏡を手放せなくなったのか。旦那は本当に浮気をしているのか。最終的に導き出される結末には、はっとさせられます。

『ペンテジレアの叫び』

借金まみれの永沢陽介は、ある男から「自宅へ泥棒に入ってほしい」という奇妙な依頼を受ける。最初は訝しんだ陽介だったが、報酬に目がくらみ依頼を承諾してしまう。

陽介の妻・美耶子は生活費を稼ぐために家政婦の仕事を始める。勤め先は昔ながらの立派な洋館。主の崎山は病気の妻の話し相手になってほしいという。

妻は精神の病気で喋れなくなってしまった上、脚も悪くしてしまい車椅子生活を送っている。家政婦の仕事を続けるうちに美耶子はこの家に不信感を抱き始める。

陽介、美耶子夫妻に訪れる驚愕の結末とは。

『悪魔の耳』

かつて連続強盗殺人事件を起こした芝田が精神病院を退院した。芝田は二人を殺したにもかかわらず、心神喪失を理由に刑罰には問われなかったのだ。

芝田の退院と期を同じくして、当時事件を担当していた刑事とその娘が惨殺された。相棒だった佐竹の元にも芝田から電話がかかってくる。

自分も殺されるのではないかと警戒する佐竹。佐竹は芝田が退院したことに憤りを感じていた。奴は逮捕当時、演技をしていただけではないのか。佐竹はずっとそう疑っていたのだ。

やがて佐竹の大切な人のもとへ芝田が訪れ……。

コメント

タイトルとURLをコピーしました