『私たちが星座を盗んだ理由』 北山猛邦

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感想 ★★★☆☆

青春っぽいものやファンタジーなものまで、いろんな話が収められたミステリ短編集。設定は違えど意図していることはどれも共通で、最後にひと波乱あって隠されていた画が見えてきます。

北山猛邦は物理トリックの作家というイメージを持っていたので、こういう作品も書けるのかと少し意外に感じました。

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各話あらすじ

『恋煩い』

駅のホームでよく見かける先輩に恋をした女子高生が、恋の願いが叶うと噂のおまじないを次々と試していく。そのおかげか今まではただ見ているだけだったのに、話せる関係にまで発展。

しかし最後に予想外の展開が待っている。

『妖精の学校』

主人公の少年が目を覚ましたのは、同年代の子供達が多く暮らす絶海の孤島だった。彼はそれまでの記憶は失っており、なぜこんなところにいるのかまったくわからない状態。

時折謎の襲撃がある以外は何不自由なく生活していたが、どうして自分たちがここに居るのか知りたくなって島の禁忌とされる場所へ侵入する。

『嘘つき紳士』

友達の借金を背負い人生に絶望していた男が、道端で携帯電話を拾う。そこへ持ち主の彼女と思われる女性からメールが届き、男は彼氏になりすましてメールのやり取りを続ける。

そして彼女から金をだまし取る方法を思いついて実行するが――

『終の童話』

山奥で静かに暮らしていた小さな村に、ある日、人間を石に変えてしまう化物が襲来する。何とか退治できたものの、主人公の少年が慕っていた女性と、大半の村人が石に変えられてしまう。

少年はそれからも石像となった彼女と生活を続け、十年の歳月が過ぎた頃、石になった人間を元に戻せる魔術師が村へやってくる。

家族を石に変えられた人々は歓喜の声をあげるが、それは新たなトラブルを巻き起こすことになる。

『私たちが星座を盗んだ理由』

星空のきれいな田舎町で看護師をしている女が、何年かぶりに幼なじみの男と再会して、幼い頃に起きたある出来事を回想する。

彼女にはずっと入院生活をしていた姉がいて、その幼馴染みが七夕の日に星座を一つ消すと姉に約束したのだ。

七夕の夜に病状が急変して姉は亡くなってしまうが、その前に星座が消えたと言い残した。それをずっと不思議に思っていた看護師は、彼と再会して真実を知ることになる。

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感想

どれもよく出来た話で、少し時間が空いた時などに最適の一冊だと思います。ただ、結末はなんとなく予想できるものばかりでした。

細かいところまではわからずとも、おそらくこういう風になるだろうと察することができて、驚きという意味ではそこまでだった。悪意のある結末だったりするので、読後感はあまりよくないですね。

『恋煩い』は似たような結末を怖い話か都市伝説で聞いたことがあったので、嫌な気持ちになるよりも、どちらが先なのだろうと考えてしまった。

結局どちらが先かはわかりませんが、面白い短編に違いありません。この話は十代の若い人が好きそうですね。

『妖精の学校』は未来を想定した話なんでしょうか。そうするとなかなか考えさせられます。

『終の童話』はファンタジーな世界観で面白い。結末はリドルストーリーになってますが、どちらを選んでも悲しい。

『嘘つき紳士』は一番ミステリらしいといえるかもしれません。物語の裏に潜んだ真相には納得したし、何ともいえない気持ちにさせられます。

『私が星座を盗んだ理由』は星座を盗んだ方法に期待していたのですが、それはわりと呆気ないものでした。

ドラマ性は一番あって、読み終わった後に切ないような悲しいような複雑な心境に襲われました。小説を読んだという感じがします。

あとがき

こんな具合でいろんなタイプの短編がまとめられています。どれか気に入る話が見つかるでしょう。なかなか満足度の高い短編集でした。

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