社会派ミステリ 『天使のナイフ』薬丸岳 あらすじと感想  

感想 ★★★★☆

第五十一回 江戸川乱歩賞受賞作。

乱歩賞は社会派ミステリが受賞する傾向が強い。本作もその傾向にバッチリと当てはまる社会派ミステリでした。

細かいところまでよく調べた上で書いていることが存分に窺えます全体としてのまとまりも良かった。

小説としての質が重要視されるこの賞を受賞したのも納得の出来栄えでした。

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感想

物語は過去に三人の少年に妻を殺された桧山の視点で語られます。

妻を殺した三人は十三歳だったため、罪に問われることはなかった。その辺りの法律の事情や罪を犯した少年たちの処遇などが詳しく書かれています。

桧山が抱いた憤りや納得のいかない感情を、読者もリアルに体感することができます。読んでいて考えさせられる作品。

そんな事件があった四年後、犯人の一人が殺されその容疑が桧山へと向けられます。桧山はカフェの店長として働きながら、男手一つで四歳になる娘を育てていた。

犯人の一人が殺されたのを知った桧山は、罪を犯した少年たちがその後どんな生活を送ってきたのか、贖罪の気持ちがあるのか知りたくなる。

そして少年たちのことを調べている内に、もう一人の少年も殺害されます。

なぜ二人は殺されたのか。なぜ四年前に妻は殺されたのか。すべての真相がラストで明らかになります。

物語の構成が上手いので最後まで飽きずに読むことができました。終盤にはミステリらしい結末も用意されています。

ストーリーだけでなく、ミステリとしてもよく出来ていて満足です。

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