トリックが話題『予言の島』澤村伊智 

manto

感想 ★★★☆☆

ホラー作家として有名な澤村伊智がミステリー小説を書いたということで、興味を惹かれ読んでみました。
そうはいってもホラー作家だからミステリー風ホラーだろうと思いきや、がっつりミステリーしてました。大掛かりなトリックが仕掛けられています。ミステリー目当てで買って問題ないです。

スポンサーリンク

あらすじ

精神を病んで自殺未遂を起こした友人を元気づけるために、仲良し三人組が旅行を計画する。旅先に選んだのは瀬戸内海に浮かぶ辺境の島。

住んでいるのが老人だけの何もないところだが、一部の間では有名だった。というのも、昔この島で有名な霊能者が死に、その死に際に不吉な予言を残したからだ。

――今から20年後この島で六人の人間が死ぬ。

その予言が当たるかどうか確かめようと、軽い気持ちで三人はこの島を旅行先に選んだのだった。

彼らの他にも同じ考えの者が何人かいて、いずれも癖の強い人間ばかり。普段は老人しかいないその島が俄に活気づいた。そして迎えた予言当日、なんと本当に死人が出てしまう。さらに予言をなぞるように、次々と人が死んでいくのだった。

スポンサーリンク

感想

閉ざされた島で起きる連続殺人――まさに本格ミステリの王道の設定です。『本格ミステリ・ベスト10』では8位になっていたし、あらすじを見て面白そうだったので期待したのですが、正直そこまでではなかった。

その一番の原因はキャラクターに魅力を感じなかったからです(あくまで個人の意見)。主要登場人物に感情移入できなかったし、逆に反発を覚えることもなくて、何だかあまり印象に残らないんですよね。そこが残念でした。

ストーリーに関しては好きなタイプの話だった。作品内で三津田信三や横溝正史に触れられていたり、心霊系の話題があったり、著者はそういうのが好きなのかもしれませんね。その部分にはとても好感が持てました。

老人しか住んでいない島、謎の人形、狭いコミュニティの秘密など、その手の作品に求める雰囲気は感じられました。そして、ただそうするだけでなく、それを逆手にとったようなやり方も面白い。

展開についても、中盤からパニックものみたいなノリになって楽しめました。

トリックについて

さて、トリックについてです。トリックが明らかになった時、『本格ミステリ・ベスト10』にランク入りした理由がわかりました。それまでの景色が一変するこの手のトリックは、本格好みですね。ただ、好き嫌いは分かれる。

先行作品に類例があるので、斬新なトリックというわけではないです。ミステリを読み慣れている方なら、ああ、あの作品で似たようなのがあったなあと、思い至るはず。

僕は素直に騙されました。澤村伊智がもともとミステリ作家じゃないのもあって、まさかこういうトリックを使ってくるとは思ってもみなかった。それで騙されてしまったわけですが、不思議とカタルシスは得られなかった。

なんか随分唐突な印象を受けたんですよね。違和感を覚える部分があったとはいえ、さりげなさ過ぎる気がします。伏線をどの程度にするか、おそらくこの辺の塩梅が難しいのでしょう。些細すぎても駄目だし、あからさまだとバレてしまう。

そう考えると、この手のトリックを効果絶大に使っている作品の凄さを改めて感じますね。

あとがき

面白い要素がいろいろある作品でした。キャラクターに魅力を感じられたら評価は変わってくるでしょうね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました