『Bハナブサへようこそ』 内山純

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感想 ★★☆☆☆

第24回鮎川哲也賞受賞作。 主人公の働くビリヤード店に様々な事件が持ち込まれ、そこに集った人間たちが推理合戦を繰り広げる安楽椅子探偵もの。

短編三作と中編一作からなる連作短編集となっています。とても無難な印象を受ける作品で、大賞受賞作にしては少々地味かなと感じました。

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あらすじ

主人公の中央(あたりあきら)がバイトしているのは、ビリヤードの世界チャンピオンである英雄一郎が経営するビリヤードハナブサ。

レトロな雰囲気のその店は、個性豊かな常連客で賑わっており、英は皆から先生と呼ばれ慕われている。そこへ様々な事件が持ち込まれ、一同はビリヤードそっちのけで推理談議に花を咲かせる。

『バンキング』はレストランで起こった刺殺事件。『スクラッチ』はある会社での転落死亡事故。『テケテケ』は閉ざされた空間で起きた自殺騒動。『マスワリ』は豪邸のビリヤード室での殺人事件。

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感想

いずれの作品も展開の型が決まっていて、まとまりが良く安定感があります。ビリヤードの技と事件のトリックを絡めている点も上手い。

ただ突き抜けるような切れ味はなくて、平凡な印象は拭えないですね。トリックで面白かったのは、『テケテケ』のある特殊な事象を用いたもの。

これは面白いと思ったんですが、同時にこれを使うならもっと面白いことができたのでは、とも思いました。

てっきり英先生が探偵役だと思っていたのですが、語り手でもある僕こと中央が事件の謎を解きます。

英先生はビリヤード以外に興味はない飄々としたキャラ。 登場するキャラクターはそれぞれ特徴があってコミカルながら、類型的にも見えてそれほど魅力的に感じませんでした。

合コン好きで軽いノリの大学生、江戸っ子の爺さん、年齢不詳の金持ち姉さんなど、これらはわりとありきたりだと思う。

そして主人公の存在感があまりにも希薄。控えめなのに加えて、喋る時に「」ではなく――が使われており、何だか黒子のような印象です。

あとがき

欠点が無く綺麗に整っている一方で、真新しさを感じませんでした。まるで無印良品だけで整理整頓された部屋のよう。

好みの問題かもしれませんが、枠から飛び出したような作品も読んでみたいですね。次回作に期待。

コメント

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