感想 ★★★☆☆
法月綸太郎が活躍する五つの話を収録した短編集。どの作品も一定の質を保っているところはさすがだけれど、キレというかパンチ力は不足していたように思う。
地味だが確実にダメージを与えられるボディーブロウといった印象。一発でノックアウトするような派手で豪快な作品はなかったです。
でも個人的な趣向から『都市伝説パズル』は大好きです。各話にはざっと触れ、主に『都市伝説パズル』の感想を書きたいと思います。
各話の感想
『イコールYの悲劇』
ダイイングメッセージもの。なぜ=Yというメッセージになったかは分かったけれど、無理やり過ぎる気がします。
『中国蝸牛の謎』
密室もの。かたつむりの蘊蓄が豊富。この物理トリックは面白かったです。
『ABCD包囲網』
無関係な事件の自首をしてくる男。男はなぜそんなことをするのか、目的は何なのか、に迫った作品。
『縊死伝心』
ロジカルな作品。お茶の間での推理で事件を解決する『都市伝説パズル』と同じスタイル。
『都市伝説パズル』
友人宅での飲み会の帰りに、忘れ物に気付いた女性が再び友人宅に戻る。部屋の明かりは消えていて寝ていると思った彼女は、電気を付けず暗闇の中で忘れ物を探り当て帰宅する。
翌日になってその友人の遺体が発見され、壁には〝電気をつけなくてよかったな〟と書き残されていた――。
有名な都市伝説を元に作られた話。都市伝説が好きな僕にとってはとても面白かった。それでいて本格ミステリとしての謎解きもしっかりしているので申し分ありません。
本作は安楽椅子探偵もので、お茶の間で綸太郎と父親が推論を重ねて事件を解決します。登場するのは二人だけで、現場に捜査に行ったりもしません。綸太郎は父親から事件の話を聞き、論理の力で犯人を指摘します。
作者もあとがきで言っているように、犯人を当てるのはそう難しくない。その証拠にあまり犯人を当てたことがない僕でも、犯人とその理由を当てることができました。
個人的にかなり好きな作品。都市伝説をからめたトリック、ロジックの作り方が上手く、読んでいて気持ちよかった。都市伝説が好きな人はきっと気に入るでしょう。
あとがき
短編集としてはさほど良い出来ではないと思います。どの話も普通に楽しめるものの、何か物足りない。ただ『都市伝説パズル』が凄く好みの作品だったので不満はないです。
短編集としては法月綸太郎の冒険の方が面白かったですね。
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