アニメ化されたこともあって、シリーズの存在は知っている、もしくは、アニメなら見たことがあるという人は多いかも知れません。
そこから興味を持って原作小説を読みたいけれど、読む順番がわからないという人のために、小説版の紹介をしたいと思います。読みやすいし、青春要素が満載なので特に若い人におすすめ。
人が死なないミステリーなので、そういうのが苦手な人のミステリー入門としても良さそうです。著者の初野晴は横溝正史賞を受賞してデビューしてるので、ミステリー作家としての実力も折り紙付き。
シリーズの概要
ハルチカシリーズは第一作目の『退出ゲーム』から始まる青春ミステリーで、現在までにシリーズ五冊、番外編一冊が刊行されています。
高校生の上条ハルタと穂村チカが、学園内外で様々な謎に遭遇し、それを解決へと導いていきます。物語の主な語り手はチカで、ハルタが探偵役、形式は連作短編集です。
普段のやり取りは軽妙でアニメ的なところがあり、キャラクター小説としても楽しめます。謎解きはちゃんと論理的に行われ、ミステリー風ではなく、れっきとしたミステリ小説になっています。
キャラクター小説としても、ミステリとしても楽しめる、それがハルチカシリーズの最大の魅力ですね。
読む順番
読む順番については、間違いなく刊行順がいいです。回を重ねるごとに新たなキャラが加わる形式なので、途中から読むよりもキャラ同士の関係性を理解しやすい。
このシリーズ登場人物が結構多いんですよね。期間を空けて読んだ時に、あれ、このキャラ誰だっけ? と思うこともありました。最初の方は一話で一人をフューチャーする形なので、どんなキャラか知るのに良いし、印象にも残ります。
ミステリー要素が独立しているため、ミステリ目当てで途中から読めないこともないですが、最初から読むのが無難だと思います。
ミステリーとして
ハルチカシリーズは人が死なないミステリー、いわゆる日常の謎に分類されます。しかしながら、ミステリに関してはシリアスな話、重い話が多いです。普段のほのぼのとした雰囲気とは真逆ですね。
日常の謎は得てして軽くなりがちだけど、結末に何とも言えない気持ちになったりします。僕はそこに魅力を感じています。
肝心のミステリーとしての出来ですが、しっかり作り込まれています。もちろん、話数が多いので中には微妙なのがありますが、質の高い短編ミステリーとも出会えます。
奇想天外なトリックとか、論理が緻密とか、そういう本格ミステリーとはタイプが違いますが、真相には意外性があるので驚かされることが多々ありました。ミステリー目当てで読んでも、満足できる話をきっと見つけられるでしょう。
僕が特に面白いと思ったエピソードは、『退出ゲーム』収録の『エレファンツ・ブレス』と、『千年ジュリエット』収録の『決闘戯曲』。
青春ものとして
ハルチカシリーズは学園ミステリー意外に、部活ものとしての側面も備えています。ゆえに、青春らしさをより強く感じられる青春ミステリーシリーズ。
ハルタとチカは吹奏楽部に入るのですが、二人が入部した頃は部員も少なく、禄に活動していない状況でした。それから刊を重ねるごとに部員が徐々に増えていき、部としてのレベルが上がっていく。
彼らの目標は学生コンクールの最高峰、普門館の舞台に立つこと。そのために、日々練習に励んでいます。まさに王道の青春部活ものの造りです。
とはいえ、演奏シーンを詳細に描いたりはしていません。メインはあくまでミステリーということでしょう。だから、部活ものを期待して読むと、肩すかしをくらうかもしれません。
あとがき
このようにハルチカシリーズは様々な魅力を秘めているので、気になる人は手にとってみてはいかがでしょう。連作短編だし、文章も読みやすいので普段あまり本を読まない人にもおすすめです。
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