ハルチカシリーズ第三弾『空想オルガン』初野晴

感想 ★★★☆☆

青春ミステリとして人気のハルチカシリーズ第三弾。本書ではついにハルタとチカたち吹奏楽部が大会に出場する。その成績いかんによって地区大会、県大会、東海大会という具合に上のステージへ進むことができる。

大会を通じてハルタとチカはいろんな人物と出会い、交流するうち謎にぶつかることも。本作には四つの短編が収められています。

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あらすじ

『ジャバウォックの鑑札』

大会の会場付近をさまよっていた希少価値の高い犬を保護したハルタ。そんなハルタの元へ飼い主を名乗る二人が現われ、自分が本当の飼い主だと主張する。 ハルタは犬の首輪にあった暗号からどちらが本当の飼い主か推理する。

『ヴァナキュラー・モダニズム』

引っ越しを余儀なくされ新居を探していたハルタは、格安で理想的なアパートを発見する。ところがそのアパートには幽霊が出るという噂があり、ためらうハルタ。大家から詳しい話を聞いているうちに、この幽霊譚に隠された本当の意味を知る。

『十の秘密』

チカたち吹奏楽部は同じ大会に出場する他校の生徒と知り合いになる。ギャルの恰好をして異彩を放つ彼女たちを、最初の内は警戒していたが、音楽に対する熱意が本物だと知り考えを改める。話をするうちに彼女たちの間には、何か人には言えない秘密があることを知る。

『空想オルガン』

オレオレ詐欺グループの男が、現金の受け渡し場所である吹奏楽の会場にやってくる。そこではオルガンのイベントも行われていて、男は自分の過去に思いをはせる。

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ミステリとしても青春小説としても

念願である吹奏楽の大会に出場する様を描いた本作ですが、スポコン小説や音楽小説のような面白さはなく、あくまでミステリ小説でした。

なのでハルタとチカが演奏する様子などは描かれません。ミステリに重点を置いているから仕方ないのかもしれないけれど、少し物足りなく感じました。

前二作には、ミステリ小説としてこれはと思う話があったけれど、本書にはそこまで良いものがなかった。あえてあげるなら『ヴァナキュラー・モダニズム』 。これはとてもユニークな作品で一見の価値あり。この真相に気づける人はなかなかいないでしょう。

今回は青春小説としてもミステリとしても微妙でしたかね。ミステリのテクニックとして、仕掛けは施されていましたが、コアなミステリファンを唸らせるほどではないでしょう。

これまでの作品でもあったように、重いテーマを扱った話もありました。しかしながら、個人的にはそこまで胸を打つ話でもなかったです。あくまで少し物足りないという意味であって、面白くないわけじゃないです。シリーズの内の一つとしてみると、一定の質は保っています。

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