『などらきの首』澤村伊智 比嘉姉妹シリーズ初の短編集

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感想 ★★★☆☆

比嘉姉妹シリーズ四作目で今回は短編集となっています。六編が収められており、オーソドックスなホラーから感動系までいろんなテイストのものがありました。

ミステリ色が強めの作品が多くて、恐怖を感じるものはなかったですね。作品の出来にもバラツキがあって、秀逸なのもあれば平凡なものありました。

日本推理作家協会賞の短編部門を受賞した『学校は死の呪い』は出色の出来映えで、この短編は文句なしに星五つ。これ目当てで読むのもありです。

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あらすじ

『ゴカイノカイ』

某ビルの五階で怪奇現象が起き、テナントが相次いで退去した。困ったオーナーは霊能者に解決を依頼。はたして子供の泣き声や足音がする原因は何なのか。

『学校は死の呪い』

体育館に白い幽霊が現れる――。そんな噂を耳にした小学生の美晴は、その正体を突き止めようと試みる。白い幽霊は雨の日にだけ現れ、決まった行動を繰り返していた。

何故そんな行動をするのか、そして何故雨の日だけなのか。そこには意外な理由が隠されていた。

『居酒屋脳髄談義』

仕事終わりサラリーマンたちが居酒屋で飲み会をやっていた。彼らは部下の女性に対し、マウントを獲ろうと様々な話題をふっかける。いつもなら論破できるはずなのに、言い負かされた挙げ句、意外な事を告げられるのだった。

『悲鳴』

幽霊が出ると噂の山で大学の映画同好会が映画撮影を行っていた。その最中に部員の一人が悲鳴を耳にし、それから他の部員にも次々と連鎖する。怪現象に怯えていると、ついには死亡者まで出てしまうのだった。
 

『ファインダーの向こうに』

怪異が起きると噂の家で写真撮影を行うと、予想通り不思議な写真が撮れた。その家とはまったく無関係の、普通の風景写真だった。何故こんなものが映ったのか霊能者と共に調査をすると、意外な事実が明らかとなる。
  

『などらきの首』

〝などらき〟という化物の話を聞いた高校生の野崎は、友人と共に問題の地を訪れる。などらきはその友人の祖父母が住む山村に伝わっており、彼は幼い頃に恐怖体験をしていた。

などらきの首が洞窟の奥にあり、それが彼の目の前で忽然と姿を消したと言う。その消失の謎を解明しようと、野崎と友人は洞窟を調査する。どうやって首が消えたのか、はたしてなどらきとは何なのか。

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感想

一番面白かったのは『学校は死の呪い』。本シリーズの主人公である比嘉姉妹の美晴がこの短編の主人公です。それでまず興味を惹かれたし、内容も素晴らしかったので申し分ないです。

幽霊はなぜ雨の日だけ現れるのか、なせ同じ行動を繰り返すのか。この理由が秀逸。

ちゃんと納得できるのはもちろん、心に訴えかけてくるものがあります。意外な動機もののミステリとして、非常によく出来ている。

そしてシリーズ作の1つとして見ても上手い。美晴の姉・琴子は凄腕の霊能者です。その琴子はこの現象を知りつつ放置していました。

琴子がそうした理由としても、この動機は納得できるものになっていて、上手いなあと唸らされましたね。

単純に1つの短編として面白いし、シリーズにおける姉妹の話としても面白い。そういう意味で極めて優れた短編に仕上がっています。

表題作の『などらきの首』は期待したほどではなかった。ちょっと期待が高すぎたのは否めないですね。

〝ぼぎわん〟〝ずうのめ〟と同じ名付け方だったので、どんな化物を見せてくれるのかと、ハードルをあげてしまいました。

消失の方法に新しさはなかったし、〝などらき〟の由来も割と普通でした。特に怖さも感じなかったです。

ただこれはあくまで期待が高すぎたからで、つまらないわけではないです。

その他の短編も特筆することはないです。『ずうのめ人形』のキャラが登場する話もあるので、そういう意味では楽しめますけどね。

あとがき

読みやすくてサクッと手軽に読むことができます。シリーズの良さが出ているかは微妙な気がしますが、主要キャラの人となりが知れるのは良いですね。

本書から読むことも可能ですが、過去シリーズのキャラが何人か登場するため、既読の方がより楽しめるのは間違いないです。

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