『密閉教室』法月綸太郎  


感想 ★★★☆☆

本格ミステリに強いこだわりを持っている著者のデビュー作。
王道の青春ミステリという感じでした。デビュー作ゆえ荒削りな部分はあるものの、謎解きに関してはちゃんと論理的に作られており、本格ミステリとして楽しめました。

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あらすじ

早朝の教室で同級生の遺体が発見される。現場となった教室は、窓とドアが閉ざされ密室状態になっていた。そして、四十八組あったはずの机とイスはすべて消えていた。

遺体の傍らにコピーした遺書が残されていたが、はたして本当に自殺なのか。高校三年生の推理マニア工藤順也がこの不可解な謎に挑む。

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感想

まず謎がとても魅力的。密室ものの場合、通常であれば密室内に遺体があって、どうしてこうなったのかが問題になります。

しかし本作では、それに消失まで加わっているのです。何か小物が消えているレベルではなく、1クラス分の机と椅子という異常な状態。

密室と消失が同時に起こっている希有な作品で、一気に興味を惹かれます。

そして、そんな異常な謎がちゃんと納得できる解決になっているので、さすが法月綸太郎だなあと。本格好きの人は読んで損はないです。

ただ、作りこみが甘いと思う点はいくつかありました。それでも不満に思うことなくどんどん読み進めることができた。

警察が高校生に探偵まがいのことを自由にやらせるのは、通常なら不自然というかありえないと思いますが、本格ミステリというジャンルを鑑みれば、一つのお約束としてスルーできます。

この作品の白眉はなんといっても机とイスが消失していた理由。このトリックには唸らされた。なんの反論もありません。素直に感心しました。密室トリックの方は、割とよくあるタイプのものでした。

あとがき

この小説はどこに重点をおくかによって評価が別れそうです。青春小説としては共感できない点がいろいろありますが、トリックはとても面白い。僕は机とイスの消失トリックのおかげで、満足感を得られました。

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