『しらみつぶしの時計』 法月綸太郎 

感想 ★★★☆☆

非シリーズもの十篇を収めた短編集。究極のロジック小説ともいえる『しらみつぶしの時計』から、ファンタジー小説『猫の巡礼』まで、様々なテイストの短編が揃っています。

中でも『使用中』、『ダブル・プレイ』、『しらみつぶしの時計』の三作が印象に残りました。

『使用中』は推理作家と天然な編集者とストーカー女による密室もので、ドタバタコメディーのようなミステリ。三人のキャラクターと展開が面白く、あっという間に読んでしまった。

『ダブル・プレイ』は交換殺人もの。 妻を殺したいと考えていた主人公は、バッティングセンターで出会った男に交換殺人をもちかけられる。

思惑通りに進んでいたはずが、最後に予想外の出来事が起こる。

単純な図式に一捻り加えてあって、最初は何が起こったのかよくわかりませんでした。 謎解きされて初めてどういうことか理解できた。

僕みたいに頭の悪い人間はこの主人公と同じ結末を迎えるだろうと思いました。

『しらみつぶしの時計』はロジックを前面に押し出した作品。小説というよりもパズル問題を読んでいる気分になりました。

すべて異なる時を刻む1440個の時計の中から、正しい時刻を示しているものを探し出す話。

物語は論理に沿って淡々と進んで行きます。パズル問題とその答え合わせを見ているような感じで、なるほどと思ったものの、ミステリを読んだ時に感じる面白さとは違った。

法月綸太郎は長編も短編もシリーズものがほとんどなので、こういった作品集は珍しい。特筆するほど面白いものはなかったけれど、どれも一定の質を保っていて読む価値は充分ありました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました