感想 ★★★☆☆
内容(「book」データベースより)
過去は変わらないはずだった―1992年の夏、中学2年生の美雪は、未来からやってきた保彦と出会う。旧校舎崩壊事故に巻きこまれた彼を救うため、10年後へ跳んで携帯電話を持ち帰った。そして2002年の夏、思いがけず作家となった美雪は、その経験を題材にした一冊の小説を上梓した。彼と過ごしたひと夏、事故、時空を超える薬、突然の別れ…。しかしタイムリープ当日になっても10年前の自分は現れない。不審に思い調べていくなかで、同級生の連続死など記憶にない事実が起きていることに気づく。過去と現在の矛盾が生み出した、残酷な夏の結末とは―。
感想
タイムスリップものの青春ミステリ小説。タイムスリップで青春といえば筒井康隆の『時をかける少女』が真っ先に思い浮かびます。
本作もそういった甘酸っぱい爽やかな小説かと思って読んだのですが、似て非なるものでした。
タイムスリップと青春というのは同じですが、本作の場合ミステリ要素が強く、ホラー要素もあるので、『時をかける少女』とは読み味が異なります。
爽やかさとはほど遠い、後味の悪さを感じさせる作品に仕上がっています。
そういう作品は決して嫌いではないのですが、意外に面白くなかったなあ、というのが正直な感想。
あらすじを読んで、もっと面白いものを期待していたので残念でした。
物語は2002年の現在と、1992年の過去が交互に語られる構成になっています。
2002年の現在では、過去の自分がやってこない謎と、同級生が次々と殺される事件に頭を悩ませます。1992年の中学時代では、未来人との恋やクラスのいじめ問題などで苦悩する。
タイムスリップものといっても、科学的な理論などは一切出てきません。未来だから可能ということで押し通しています。
難しい理論などは出てこないので、SFに詳しくなくても難なく読めます。
ただ、ちょっと強引というか無理矢理すぎる部分があります。何か矛盾が起きても、それはそういうものだから仕方ない、といった具合で進められます。
SFらしいSFが好きな人には向いてないかもしれません。タイムスリップという設定を利用した青春ミステリです。
あとがき
強引過ぎて腑に落ちない点が多々ありました。最後にすべての謎が解かれる構成は良いと思うし、結末も悪くないです。
ただ、描写が手慣れていないため、すんなりと話が入ってきません。
本作は少々期待外れでしたが、次回作に期待したいと思わせる何かはあります。
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