『○○○○○○○○殺人事件』早坂吝 タイトル当て本格ミステリ

無人島

感想 ★★★★☆

小説に限らず、作品のタイトルは売り上げを左右するほどメチャクチャ重要です。そのタイトルを伏せ字にするという、まさかの作品が本書『〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件』。

斜め上過ぎる発想ですね。そして奇抜なのはタイトルだけでなく、内容についてもそう。変わった要素てんこ盛りです。

書いたのは本格ミステリ作家として着実に知名度を上げている早坂吝。メフィスト賞を受賞した本作は、メフィストらしいというよりも、メフィストでないと受賞できなかったでしょう。

その理由は読んでみれば明らか。エロ+バカミスといった具合で人を選ぶのは間違いない。

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あらすじ

アウトドアが趣味の公務員・沖はブログで知り合った仲間と共に、人里離れた孤島で休暇を過ごすのを毎年の楽しみにしていた。

メンバーの中には意中の相手である女子大生の渚もいて、今年こそ何とか恋人同士になりたいと願っていた。

そんな中、今回は一つ違う点があった。メンバーの一人が勝手に恋人を連れて来たのである。その恋人というのがまた個性的な人物で、派手な恰好をした色気むんむんの女子高生らいちだった。

初日こそ楽しく過ごしたものの、翌日メンバー二人がいなくなり、さらに別のメンバーの死体まで発見され混乱の極みに達する。はたして犯人は何者なのか、そしてこの作品のタイトルとは――

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設定はクローズドサークル

絶海の孤島で事件が起きて外部と連絡がとれない状況ーーこれはこの手の作品ではお決まりの舞台設定。アンチの人からすると、わざわざこんなところに行くなんて不自然、馬鹿の一つ覚えという声が聞こえてきそうです。

だが、この作品はそこにちゃんと理由があります。孤島じゃないと絶対に成立しない。エロやバカミスが苦手でも、こういう設定が好きなら読む価値は充分あります。

文章が読みやすかったのもポイントが高い。現代っぽい文体とでもいいましょうか、小説を読み慣れていない若い人でも、スラスラ読み進めることができるはず。加えて語り手が個性的なので飽きません。この辺りは工夫されていると感じた。

その他のキャラもちゃんと立っています。特に女子高生のらいち。通常こういうキャラは嫌われ役になりがちだけど、不思議と悪い印象を受けず、それどころかどんどん好感をもっていった。

トリックについて

肝心のトリックがどんなものかというと……これはもうご自分の目で確かめて下さいとしか言えません。僕は唖然としました。完成度の高い真面目なトリックと出会った時とは、また少し違うタイプの驚き。

最近この感覚を味わったのはジャック・カーリイの『百番目の男』を読んだ時ですかね。それ以来でした。まあ『百番目の男』は本作とは真逆のテイストですが。

○部分に入るタイトルは最後に明かされます。思わず吹き出してしまいました。ここまで徹底的にふざけていると、爽快感がありますね。

あとがき

本作は前例のない奇抜な作品で面白かったです。ただ好みは別れるでしょうね。真相を読んで、何だこれ、と鼻白む人も少なからずいると思う。料理でいうと珍味といったところ。

変わった話を読みたい人におすすめ。僕は笑えました。

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